おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

ワタリガニの「ワタリ」とは何か

ワタリガニの「ワタリ」とは何でしょうか。

海を「渡る」という意味で名づけられました。

 

渡るというよりは、正確にいうと泳ぎます。

カニには珍しい性質です。

 

英語でも「スイミングクラブ」といいます。

何だか水泳部に所属しているみたいです。

 

ワタリガニは、ハサミも含めて五対の足を持ちますが、

五番目の足が平らな形をしています。

 

まるで魚類のヒレのようにその足を動かして

かなりの高速で海中を泳ぎます。

 

群れをなして泳ぐワタリガニの様子が

海を渡っているように見えるのです。

 

ワタリガニは日本各地の海に生息しているので

多くの別名を持っています。

 

菱形の体型から「ヒシガニ」と呼ばれたり、

泳ぐ姿から「オドリガニ」と呼ばれたりします。

 

全国的には「ワタリガニ」ではなく、

「ガザミ」と呼ばれています。

 

その語源は「カニバサミ」といわれています。

略して「ガザミ」となったそうです。

 

しかし、なぜ「カサミ」ではなく「ガザミ」なのか

詳しいことはわかっていません。

 

見た目がトゲトゲしい印象を持つために

濁点がついたのかもしれません。

 

ワタリガニはオスとメスで旬が異なります。

オスは夏から秋にかけて旬を迎えます。

 

メスは内子と呼ばれる卵を抱いた冬が旬です。

卵の濃厚な味わいを楽しめます。

 

ズワイガニやタラバガニに比べる小型ですが

旨みが濃いのがワタリガニの特徴です。

 

身が小さい分、価格が手ごろですし、

何より丸ごと料理できます。

 

味噌汁やカニ飯などの和風の料理だけでなく、

中華風に豆板醤で炒めることもできます。

 

イタリア風のトマトクリームパスタも定番です。

香辛料を効かせてエスニック風の蒸し煮もできます。

 

ワタリガニだけに、さまざまな料理方法を

渡り歩くことができます。