おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

2023-01-01から1年間の記事一覧

中世の日本で乳製品が普及しなかった理由

日本にバターやチーズが普及したのは明治時代ですが、 じつは遥か昔に日本で乳製品が作られていました。 すでに飛鳥時代には、薬として牛乳が伝わっていました。 乳牛の飼育方法や搾乳技術も知られていました。 山城国や摂津国には酪農牧場があったそうです…

極上の乳製品と同じ名前を持つ天皇

現在の令和の天皇陛下は、初代の神武天皇から数えて 第126代目に当たる天皇でいらっしゃいます。 歴代の天皇はそれぞれ由緒ある名前をお持ちですが、 意外な名前の天皇もいらっしゃいました。 たとえば、第60代の醍醐天皇がそうです。 平安時代中期に34年間…

米菓の「柿の種」はなぜ柿の種の形をしているのか

「柿の種」という名前の米菓があります。 国民的に愛されているお菓子です。 誕生したのは1923年(大正12年)のことです。 つまり今からちょうど100年前です。 柿の種は、最初から柿の種の形をしていたわけではありません。 柿の種の形になったのは、ある偶…

渋柿の意外な使い道

時代劇では貧しい下級武士や浪人が内職をする場面があります。 傘張りの内職はよく見られます。 日本の和傘には「番傘」や「唐傘」などがあります。 いずれも竹で骨組みを作り、和紙を張ります。 当然、和紙は雨に濡れると破れてしまいます。 そこで傘張りを…

渋柿はなぜ干し柿にすると甘くなるのか

柿には、甘柿と渋柿があります。 甘柿は生食できますが、渋柿はできません。 じつは渋柿にも多くの糖分が含まれています。 むしろ甘柿よりも糖度が高いほどです。 では、なぜ渋柿は甘くないのでしょうか。 渋柿の渋みの原因はタンニンと呼ばれる物質です。 …

柿が大好物だった石田三成が最期に柿を拒んだ理由

戦国武将の石田三成は柿が大好物だったと伝えられています。 各武将から三成に柿が贈られたという記録が残っています。 それに対する三成の返礼の書状も残っています。 三成自身もまた、他の武将をもてなすために柿をご馳走しています。 わざわざ柿を持参し…

ハタハタはなぜ魚偏に神と書くのか

魚の名前には、魚偏の漢字で表されるものが多くあります。 たとえば、サバは漢字で「鯖」と書きます。 代表的な青魚ですから、もっともな漢字です。 タラは漢字で「鱈」と書きます。 雪のように身が白く、雪が降る寒い冬に旬を迎えます。 ヒラメは漢字で「鮃…

「つ」の字のハモ

ハモは京都の夏の味覚の代表です。 梅雨が明けて祇園祭の頃に旬を迎えます。 しかし、じつは秋にも旬を迎えます。 産卵を終えて身が肥えてくるからです。 産卵で身が細るのは、どの魚もそうです。 ハモに限ったことではありません。 寒い季節になると脂が乗…

タイでないのにタイを名乗る魚たち

「あやかりタイ」という魚たちがいます。 タイではないのにタイを名乗る魚のことです。 日本人にとって、タイは昔から親しまれている魚です。 その人気にあやかりたい気持ちはよく理解できます。 私たちが一般にタイと呼んでいるのは、マダイのことです。 目…

ムツでないのにムツを名乗る魚たち

ムツは東北地方から九州地方まで広範囲に生息しています。 そのため各地で呼び名が異なります。 カラス、カッチャム、モツ、クロッポ、ツノクチなどです。 オンシラズという面白い呼び名もあります。 子どもは浅瀬にいて、親は深海にいるからです。 ともに暮…

子どものような素朴な疑問だがのどぐろはなぜ喉が黒いのか

同じ魚でも名前が異なるのは珍しいことではありません。 地方にはさまざまな魚の名前があります。 たとえば、マコガレイは日本各地に広く生息しているので、 それだけ呼び名も多様です。 アオメ、アマチ、クチボソ、オカガレなどと呼ばれています。 また、メ…

子どものような素朴な疑問だがトビウオはなぜ飛ぶのか

トビウオが飛ぶのは子どもでも知っています。 しかし、なぜ飛ぶのでしょうか。 一般には、外敵から逃れるために進化したと考えられています。 マグロやカツオの方が、泳ぐ速度は速いからです。 水中ではいかに逃げても捕まってしまいます。 逃れる手段は、空…

赤い豆腐は本当に存在するのか

赤豆腐というと、お坊さんの使う隠語です。 マグロの刺身のことを指します。 しかし、赤い豆腐は本当に存在します。 沖縄の「豆腐よう」がそうです。 一体どのような豆腐なのでしょうか。 沖縄では昔から豆腐作りが盛んです。 それは養豚が盛んだからです。 …

赤豆腐とはどのような料理か

赤豆腐という名の料理があります。 じつは豆腐ではありません。 マグロの刺身のことをいいます。 お坊さんの間ではそう呼ばれています。 仏教では生き物の殺傷が禁じられています。 肉や魚を食べることも許されません。 しかしこっそりと食べられることもあ…

サンマのいないスダチの季節

夏が終わり、スダチが出回る季節になりました。 青々とした姿を八百屋さんの店頭でも見かけます。 爽やかな香りと酸味は、何といってもスダチの魅力です。 さまざまな料理に合いますが、焼き魚には最適です。 とくにサンマの塩焼きには、やはりスダチです。 …

ハッサクの名の由来

ハッサクは、広島県因島原産の柑橘類です。 甘みは少なく、上品な酸味があります。 そしてほのかな苦みが特徴です。 甘く食べやすい柑橘類が現代の主流ですが、 古来の独特の存在感を示しています。 皮を剥いた瞬間に立ち昇る爽やかな香りは最大の魅力です。…

はりはり鍋のはりはりとは何か

日本語には表現力が豊かな擬態語が数多くあります。 もちもち、こりこり、ふわふわ、ぷりぷり、などです。 食べものの食感を表すのにたいへん便利な言葉です。 それがそのまま料理名になることもあります。 たとえば「はりはり鍋」が、その一例です。 食感か…

拙著「四季の菜摘み」紹介

食生活が豊かになると失うことがある。感謝の心である。「衣食足りて礼節を知る」という言葉があるが、逆もまた真なり。「衣食足りて礼節を欠く」こともある。今や、飽食の時代を迎え、豊かであるがゆえに、却って食べものに対する感謝の心が薄れ、礼節が失…

カツオのへそとは何か

カツオは魚類ですから、へそはありません。 ところが、カツオのへそと呼ばれる部位があります。 へそとはじつは心臓のことです。 焼肉でいえば、「ハツ」のことです。 心臓は筋肉の塊ですから、歯応えがあります。 こりこりした食感が特徴です。 これを味噌…

カツオのすり流し汁とは何か

カツオ一尾を丸ごと買うのでなければ作れない料理があります。 カツオの「すり流し汁」がその一つです。 カツオを三枚に卸すと、中央の骨の部分が残ります。 いわゆる「中落ち」と呼ばれるところです。 骨の間に身がついているので捨てるには惜しい部分です…

カツオの酒盗とは何か

カツオ一尾を丸ごと買うのでなければ作れない料理があります。 カツオの「酒盗」がその一つです。 酒盗とは、塩辛のことです。 塩辛は酒のつまみに最適な料理です。 旨い塩辛には旨い酒が付きものです。 酒が無ければ盗んでも飲みたくなります。 それが、酒…

ワラで焼いたカツオのたたきが美味しいのはなぜか

カツオの刺身は皮を引いて作ることが多いのですが、 江戸時代のカツオの刺身は皮つきでした。 美しい縞模様が銀色に輝くカツオの刺身は、 その名も「銀皮造り」といいます。 ただし、皮がついていると食べにくいので、浅く包丁目を入れます。 食べやすくなる…

カツオのたたきは本当にたたいて作るのか

「たたき」とは、肉や魚を包丁でたたいて作る料理のことです。 代表的な料理が「アジのたたき」です。 包丁で細かくたたくことによって表面積が大きくなります。 その分、薬味や調味料が馴染みやすくなります。 それがたたきの特徴であり、刺身とは違うとこ…

カツオはなぜ一本釣りするのか

カツオの一本釣りは昔から行われている漁法です。 文字通り、一本の釣り竿で一匹ずつ釣り上げます。 昔は魚群探知機がありませんでしたから、 目印になるのは、カツオドリでした。 カツオドリはイワシなどの小型の魚をエサとする海鳥です。 カツオもイワシな…

江戸っ子はなぜ戻りガツオが好きではないのか

初ガツオは初夏になると黒潮に乗って日本の近海にやってきます。 北上して三陸沖で夏を過ごすためです。 親潮と黒潮がぶつかる三陸沖は多くの魚が集まりエサが豊富です。 水温も低いので、カツオの身に脂が乗ります。 秋になると、今度は成長したカツオが産…

江戸っ子が大好きな初ガツオはどこから運ばれるのか

江戸っ子の初ガツオ好きは昔から知られていました。 青葉の季節になると待ちきれなくなるようです。 もともと江戸っ子は何でも初物が好きです。 よほど見栄っ張りなのでしょう。 しかし、残念ながらカツオは東京湾では獲れません。 最も江戸に近い漁場は三浦…

「女王様がご病気です」という名前のジャム

ダイダイはヒマラヤが原産で、中国を経由して日本に渡来しました。 ヨーロッパにも伝わり、ビターオレンジと呼ばれています。 ヨーロッパでもダイダイを生食にはしません。 ジャムか砂糖漬けにします。 ダイダイを皮ごとジャムにしたものをマーマレードとい…

ダイダイ侍とはどのような侍か

ダイダイは、お正月の鏡餅に飾る果実として知られています。 代々子孫が繁栄することを意味する縁起のよい果実です。 一つの果実が、何年も落ちることなく木に生り続けます。 そのため何代もの果実が同じ木に生っています。 代々にわたって家族が仲睦まじく…

全く違う二つの顔を持つキノコ

エノキタケはエノキの木の幹に生るので名づけられました。 実際にはエノキだけでなく、ケヤキや柿の木にも生ります。 紅葉がすっかり散って、雪が舞い始める季節になると出てきます。 雪が積もっても育つので、別名「ユキノシタ」ともいいます。 私たちがよ…

王様のトランペットのキノコ

「王様のトランペット」という名前のキノコがあります。 英語でもフランス語でもイタリア語でもそういう名前です。 じつは「エリンギ」のことです。 エリンギはよくイタリア語の名称であると紹介されますが、 正しくはラテン語であり、現代イタリア語ではあ…