おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

2024-01-01から1年間の記事一覧

タラバガニの「タラバ」とは何か

タラバガニは冬に旬を迎えます。 主にオホーツク海で獲れます。 昭和初期の小林多喜二の小説「蟹工船」は、 そのオホーツク海を舞台にしています。 タラバガニを獲り、船上で缶詰に加工する物語です。 過酷な環境で働く労働者の姿が描かれています。 タラバ…

ズワイガニの「ズワイ」とは何か

ズワイガニの「ズワイ」とは何でしょうか。 その語源は「スワエ」という言葉です。 「スワエ」は漢字で「楚」と書きます。 細く長く伸びた木の小枝のことを指します。 ズワイガニの足は長く、まるでスワエのようです。 ですから、「スワエガニ」と呼ばれてい…

ちゃんこ鍋の有用性

相撲はもともと神事として発達してきましたが、 興行として成立したのは江戸時代です。 専門に相撲を取ることを職業とした男たちは力士と呼ばれ、 相撲部屋に所属して共同生活を行いました。 力士の数が増えてくると、食事の支度も忙しくなり、 一人ずつ配膳…

ちゃんこ鍋の合理性

元横綱の北の富士が亡くなりました。 ご冥福をお祈りいたします。 北の富士は名師匠としても優れた指導力を発揮し、 千代の富士、北勝海という二人の横綱を育てました。 じつは三人に共通していることがあります。 三人とも北海道の出身だということです。 …

パンにまつわるイタリアのことわざ

イタリアにはパンにまつわることわざが多くあります。 たとえば、こんなことわざです。 「歯のある者にはパンがなく、パンのある者には歯がない。」 とかくこの世はままならないという意味です。 「苦労のないパンはない」というのもあります。 人生の真理を…

秋ナスはなぜ嫁に食わせないのか

「秋ナスは嫁に食わすな」という表現があります。 昔からよく物議を醸してきました。 嫁いびりの言葉なのか、それとも嫁を思い遣る言葉なのか、 解釈が分かれているからです。 似ている表現に「秋サバは嫁に食わすな」があります。 やはり解釈が分かれるとこ…

食べてよいナス悪いナス

ナス科の植物はアメリカ大陸に多く分布しています。 人間にとって有用な野菜が多いのが特徴です。 ナス、トマト、ジャガイモ、ピーマン、トウガラシなどは すべてナス科の植物です。 コロンブス以降、アメリカ大陸からヨーロッパに伝わり、 全世界に広まって…

食べてよいキノコ悪いキノコ

秋はキノコの季節です。 キノコの炊き込みご飯やキノコ汁など、 美味しいキノコ料理が味わえます。 山にはたくさんの野生のキノコが生えています。 キノコ狩りも秋の楽しい行事です。 しかし、食べられない毒キノコがあります。 命を落とすほどの猛毒を持つ…

食べてよい肉悪い肉

世界にはさまざまな宗教があり、 食べものの禁忌が定められています。 つまり、宗教上食べてよいものと悪いものが 厳格に決められています。 たとえば、ユダヤ教やイスラム教の教義では、 豚肉を食べることが許されません。 では、他の動物の肉であれば何で…

代替肉は食肉の歴史を変えるのか

人類は先史時代から狩猟生活を送ってきました。 野生の動物や鳥類や魚類を獲る生活です。 やがて人類は牧畜を行うようになりました。 自らの手で家畜や家禽を育て始めました。 おかげで安定的に肉を確保できるようになりました。 じつは現代でもそれは変わっ…

牛肉を食べることは環境に悪いのか

日本人が一般的に牛肉を食べるようになったのは、 明治時代になってからのことです。 牛肉を食べることを奨励したのは、福沢諭吉です。 日本の食習慣を西洋化しようと試みました。 獣肉食を忌避するのは日本人の古い迷信であり、 欧米人は普通に食べていると…

サイコロステーキはなぜサイコロ型なのか

サイコロステーキという牛肉があります。 文字通り、サイコロ型をしています。 なぜサイコロ型になっているのでしょうか。 じつは理由があります。 それは、サイコロステーキが成型肉だからです。 半端な部位を集めて固めた肉のことです。 牛肉は、焼き肉用…

国内産のアサリはなぜ少なくなってしまったのか

国内産のアサリが市場から姿を消しました。 現在出回っているのは、ほとんど外国産です。 急に国内産が姿を消してしまった理由は、 数年前に発覚した産地偽装問題です。 長年の慣習として、外国から輸入したアサリを 国内産と偽って出荷していたのです。 そ…

備長炭で焼いた料理はなせ美味しいのか

鰻の蒲焼きや焼き鳥などの炭火焼きを提供する店では、 「備長炭使用」を掲げているところが見られます。 そもそも備長炭とは何でしょうか。 備長炭は良質の木炭として知られていますが、 元禄時代から紀州で作られるようになりました。 紀州の商人、備中屋長…

有精卵が美味しいのはなぜか

現在流通している鶏卵のほとんどは無精卵です。 つまり自然交配していない卵です。 温め続けてもヒヨコが孵ることはありません。 有精卵を市販している店もありますが、 無精卵に比べると流通量は多くありません。 価格も有精卵の方がやや高めですが、 有精…

ヒガンバナは本当に食べられるのか

ヒガンバナは秋の彼岸の時期に咲く花です。 目にも鮮やかな赤い花が印象的です。 別名を曼珠沙華といいます。仏典に由来する名称です。 「天界の花」を意味するそうです。 そのため中国では吉祥をもたらす花と信じられて、 平和と幸福の象徴とされてきました…

なぜ油揚げは中がスポンジ状になるのか

油揚げは、薄く切った豆腐を油で揚げた食材です。 厚く切った「厚揚げ」と区別されます。 しかし、単に厚さが違うだけではありません。 厚揚げは、内部まで火を通しません。 中は、生の豆腐の状態になっています。 そのため「生揚げ」とも呼ばれます。 一方…

「ぬかにくぎ」にはわけがある

「糠(ぬか)に釘(くぎ)」という慣用表現があります。 糠床に釘を刺しても全く手ごたえがありません 張り合いのないことや効果のないことを意味します。 同じような表現に「のれんに腕押し」があります。 どちらも小学校の国語で習う表現です。 ですから、…

そういえば最近スーパーで試食が復活している

コロナ禍の数年間は、食品売り場から試食が消えました。 感染防止の観点から仕方がないことです。 ところが、最近は少しずつ試食が復活しつつあります。 何だか嬉しい気持ちになります。 現代はネットの時代ですから、自宅で買い物ができます。 わざわざお店…

そういえば最近スーパーで米が復活している

つい一か月ほど前は、スーパーに米がありませんでした。 いつ入荷するかもわかりませんでした。 「令和の米騒動」とまで言われた深刻な事態でした。 しかし、ようやく米不足が解消されつつあります。 今年度の新米が流通し始めているからです。 それにしても…

美味しいけれど海の厄介者とは何か

ウニは古くから食用とされてきました。 独特の磯の香りと旨みが特徴です。 昔は保存用に塩漬けにしていましたが、 現在は生のウニが流通しています。 食べるのは、ウニの卵巣と精巣の部位だけです。 意外と可食部分が少ない食材です。 そのため高級食材とし…

海のパイナップルとは何か

海のパイナップルと呼ばれる食材があります。 ホヤのことです。 刺身や酢の物にして食べるあのホヤです。 ホヤ貝と呼ばれることもありますが、貝類ではありません。 では、何なのかかと問われると簡単には答えられません。 生物学的には尾索(びさく)動物に…

天然氷のかき氷はなぜ美味しいのか

かき氷は夏の風物詩ですが、その歴史はたいへん古く、 すでに平安時代の貴族たちも食べていました。 しかし、平安時代には冷凍技術がありません。 なぜかき氷があったのでしょうか。 それは、京都に氷室(ひむろ)があったからです。 氷を貯蔵しておく洞窟の…

ビールの本場ドイツではなぜ枝豆をおつまみにしないのか

夏はビールの季節です。 よく冷えたビールは何よりです。 ビールのおつまみといえばもちろん枝豆です。 切っても切れない相思相愛の仲です。 枝豆は大豆を未熟なうちに収穫したものです。 さやごと塩茹でして食べます。 ビールの本場ドイツではどうでしょう…

ずんだ餅が広まったのは伊達政宗のおかげか

ずんだ餅は仙台名物の餅菓子です。 若草色の美しい餡が特徴です。 ずんだ餅の餡は枝豆で作られます。 鮮やかな若草色は枝豆の色です。 枝豆を完全につぶしてしまうのではなく、 つぶつぶの食感を残しています。 「ずんだ」とは、やや変わった名称ですが、 豆…

冷やし中華が全国に広まったのは仙台の七夕祭りのおかげか

仙台の七夕祭りは東北三大夏祭りの一つです。 毎年8月7日頃に行われます。 初代仙台藩主の伊達政宗が七夕を奨励したことから 年中行事として定着したと伝えられています。 七夕祭りには多くの観光客が仙台を訪れます。 市内を彩る無数の七夕飾りが見ものです…

太刀魚はなぜ太刀のように銀色に輝くのか

太刀魚はまるで太刀のような細長い体をしています。 その形から名づけられたことは疑いようもありません。 英語でも「サーベルフィッシュ」と呼ばれています。 「舶刀」を意味する「カットラス」ともいいます。 しかし、じつはもう一つ別の命名説があります…

トンカツ屋さんのキャベツの千切りはなぜシャキシャキしているのか

トンカツにキャベツの千切りはつきものです。 美味しくトンカツを食べることができます。 キャベツの千切りがトンカツに添えられるようになったのは 明治時代の後期のことです。 それまでのつけ合わせは、一般の西洋料理と同じように 温野菜が添えられていま…

白菜漬けを作るとき白菜を手で裂くのはなぜか

白菜漬けを作るとき、ひと玉の白菜を四つ割にしますが、 包丁で切るのではなく手で裂きます。 包丁を使うのは、根元に十文字の切り込みを入れるときです。 その後、包丁を使わず手で裂いて四つ割にします。 包丁で切った方が、断面はきれいに見えますが、 葉…

レタスはなぜ手でちぎるのか

レタスは包丁で切らずに手でちぎります。 それはなぜでしょうか。 レタスにはポリフェノールが含まれているからです。 それが包丁の金属と反応して変色します。 切り口が茶色になってしまうので包丁を使いません。 また、手でちぎることで断面積が大きくなる…