おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

フランスに渡った日本の牡蠣

生牡蠣はヨーロッパの人々に好まれていますが、

とくにフランスの人々に愛されています。

 

フランス料理のオードブルに生牡蠣は欠かせません。

そして生牡蠣にフランス産の白ワインは欠かせません。

 

フランスの牡蠣といえは「ブロン」という種類が有名です。

ブルターニュ地方特産の牡蠣です。

 

別名「ヨーロッパヒラガキ」とも呼ばれます。

丸く平らな形をしています。

 

かつてフランスで牡蠣といえば、このブロンを指しました。

しかし現在はそうではありません。

 

1970年代に寄生虫の発生によって大量死したからです。

その後ブロンの出荷量は激減してしまいました。

 

そのためフランスでは、日本産のマガキの稚貝を輸入して

養殖するようになりました。

 

フランスでは「フィヌ・ド・クレール」と呼ばれています。

日本語に訳すと「養殖牡蠣の最高級品」という意味です。

 

日本のマガキと同じように厚みのある縦長の形をしていますが、

フランス産と日本産では風味が違うそうです。

 

同じマガキでも育つ海が違うと味も違うのでしょう。

日本産でさえ瀬戸内産と三陸産は微妙に違いますから。

 

フランス産の牡蠣はフランス人の味覚とフランス産の白ワインに

合うように育つのかもしれません。

 

ところで、2011年の東日本大震災では、宮城県をはじめとする

三陸海岸の牡蠣養殖場が壊滅的な被害を受けました。

 

その復興を支援してくれたのがフランスの牡蠣養殖業者です。

養殖に必要な筏や縄などの資材を無償提供してくれました。

 

かつて日本の牡蠣養殖業者に助けてもらった恩返しだそうです。

たいへん心温まる話です。

 

おかげで三陸海岸の牡蠣の養殖は復活しました。

ありがたいことです。

 

牡蠣を愛する人に悪い人はいません。

心の優しい人ばかりです。