おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

2018-01-01から1年間の記事一覧

日本原産なのに知られていない果実その2

秋になると実るサルナシという果実があります。 日本列島、朝鮮半島、中国大陸の山に自生しています。 キウイフルーツを小さくしたような姿をしています。 実際にキウイフルーツと同じマタタビ科マタタビ属の仲間です。 野生種だけでなく最近は栽培もされる…

日本原産なのに知られていない果実その1

あまり知られていない日本原産の果実といえばアケビです。 アケビは柿と同じように日本を含む東アジアの原産です。 柿は英語でも「カキ」ですが、アケビも英語で「アケビ」といいます。 おそらく柿を知らない日本人はほとんどいないと思いますが、 アケビを…

市田柿とあんぽ柿

市田柿とあんぽ柿はともに干し柿の仲間です。 市田柿は長野県の旧市田村で栽培されていた品種です。 それを干した柿も市田柿と呼びます。 ですから柿の品種名でもあり干し柿のブランドでもあります。 南信州の特産品です。 一方あんぽ柿は干し柿の名前ですが…

桃栗三年柿八年

桃と栗は芽が出てから三年で、柿は八年で実を結びます。 何かを成就するには相応の時間がかかることのたとえです。 古くから言い伝えられていることわざですが、 実際のところは何年かかるのでしょうか。 調べてみると桃栗三年は妥当な年数のようですが、 柿…

栗より旨い十三里

十三里とはサツマイモの異称です。 「栗より旨い十三里」は「栗よりもおいしいサツマイモ」という意味です。 寛政年間に江戸で生まれた言葉です。 「栗より」を「九里四里」に読み替えました。 九里と四里を足して十三里というわけです。 江戸っ子らしい洒落…

香りマツタケ味シメジ

昔から「香りマツタケ味シメジ」という表現があります。 香りはマツタケの方が勝り、味はシメジの方が勝るという意味です。 この場合のシメジとは本シメジのことです。 じつはシメジにはいくつかの種類があります。 最も多く流通しているのがブナシメジです…

冬菇と香信

冬菇(どんこ)も香信(こうしん)も椎茸です。 冬菇は傘が開き切らないうちに収穫した肉厚で丸みのある椎茸です。 晩秋から初春にかけて採れるので冬菇という漢字で表わされます。 干した冬菇を水で戻すとたいへん旨い出汁が取れます。 そのため干し椎茸の…

トリュフと松茸

トリュフはキノコの一種です。 地表ではなく地中に生えるキノコです。 成熟すると地上に現れることもありますが、 通常は地下数十センチメートルに形成されます。 そのため簡単に探し出すことができません。 昔はブタを使って探してもらいました。 トリュフ…

ポルチーニと舞茸

ポルチーニはイタリアのキノコです。 イタリア語で「子豚ちゃん」を意味します。 丸みを帯びた姿が子豚を連想させる愛嬌のあるキノコです。 濃厚な香りを活かしてパスタやリゾットに使われます。 日本では生のポルチーニを手に入れることは難しいのですが 乾…

リゾットはイタリア生まれ

リゾットはイタリアのお粥です。 イタリア語で「リゾ」はお米を意味します。 「オット」は親しみを表わす接尾語です。 ですからリゾットを日本語にすると「お米さん」になります。 何だか「お粥さん」に似た表現ですね。 イタリアのお粥といっても日本のお粥…

ドリアは日本生まれ

ミルク粥にチーズを乗せてオーブンで焼いた料理があります。 ドリアといいます。 もっと正確にいえばライスグラタンという料理です。 マカロニグラタンのマカロニの代わりにご飯を使ったグラタンと いえばわかりやすいでしょうか。 ドリアという名称から察す…

ミルク粥とお釈迦さま

私が子どもの頃に食べてみたいと思ったお粥はミルク粥です。 ミルク粥は牛乳粥とも乳粥ともいいます。 お釈迦さまが悟りを開くときの話にこのミルク粥が出てきます。 こんな話です。 お釈迦さまは出家後6年にも及ぶ厳しい修行を積みました。 生死をさまよう…

お粥と雑炊の違い

雑炊は野菜や魚介類などと一緒にお米を柔らかく炊いた料理です。 一般には鍋料理の最後にご飯を入れて仕上げるものと思われていますが、 それだけが雑炊ではありません。 きちんと出汁を取ってお米からじっくり炊き上げる雑炊もあります。 雑炊は「増水」が…

お粥さん

お粥のことを関西ではお粥さんと呼びます。 発音は「おかゆさん」よりも「おかいさん」に近いようです。 さん付けで呼ばれるのはお稲荷さんと同じように 庶民的に親しまれているからです。 お粥さんは消化によく体も温まります。 風邪のときや胃腸が弱ってい…

お稲荷さん

お稲荷さんとは稲荷寿司のことです。 甘辛く煮た油揚げの中に寿司飯を詰めたお寿司の一種です。 さん付けで呼ばれるのはそれだけ親しまれているということですが、 どうしてお稲荷さんと呼ばれるようになったのでしょうか。 お稲荷さんの名前は稲荷神に由来…

ミョウガの宿

落語に「ミョウガの宿」という演題があります。 こんな話です。 あるところに欲の深い夫婦が営む旅籠がありました。 部屋は汚く飯も不味いので泊まる客はめったにありませんでした。 あるとき身なりのよい旅人が一夜泊まることになりました。 見ると大きな荷…

ミョウガを食べると物忘れするのは本当か

昔からミョウガを食べると物を忘れるという言い伝えがあります。 本当なのでしょうか。 ミョウガには記憶力を低下させるような成分は含まれていません。 科学的な根拠のない言い伝えです。 迷信と言ってよいでしょう。 ではなぜこのような言い伝えが生まれた…

ミョウガの由来

ミョウガはショウガとともに中国大陸から日本に伝わりました。 香りの強いショウガが「兄の香(せのか)」と名づけられたのに対して 香りの穏やかなミョウガは「妹の科(めのか)」と名づけられました。 いつしか「せのか」がショウガと呼ばれるようになり、…

玉子豆腐

玉子豆腐は豆腐ではありません。 溶き卵に出汁を加えて蒸して固めた料理です。 調理法としては茶碗蒸しと変わりませんが、 茶碗蒸しが熱々をいただく料理であるのに対して 玉子豆腐はよく冷やしていただきます。 また茶碗蒸しには具を入れたり吸口に三つ葉を…

杏仁豆腐

杏仁豆腐は豆腐ではありません。 杏仁霜(きょうにんそう)から作られるデザートです。 アンズの種の中には仁(じん)を呼ばれる核があります。 梅干しの種の中の天神様や銀杏と同じものです。 これを粉にしたものが杏仁霜です。 古くから鎮咳の生薬として使…

胡麻豆腐

胡麻の「胡」とは古代中国語で西方の地域や民族のことを意味します。 胡麻だけでなく胡桃(くるみ)、胡椒(こしょう)、胡瓜(きゅうり)にも 「胡」の字が用いられています。 おそらくこれらの食材はシルクロードを経由してペルシャやインドから 中国に伝…

「ごまかし」の語源

江戸時代の文化文政年間に胡麻を使ったお菓子が売り出されました。 その名を胡麻胴乱といいます。 小麦粉と胡麻を練った生地で砂糖を包んで焼いたものです。 砂糖が熱で融けて生地の中が空洞になります。 その形が胴乱に似ているので胡麻胴乱と名づけられま…

サラダ油は日本だけか

サラダ油という分類は日本独自の規格によるものです。 風味がよく色調の淡い植物油のことです。 原料として菜種や大豆など9種類の植物に限定されています。 また耐冷性があり低温でも凝固しません。0℃でも澄んでいます。 そのためサラダドレッシングやマヨネ…

サラダ風味せんべい

おせんべいには醤油味以外にもいろいろな種類があります。 塩せんべい、ゴマせんべい、ザラメせんべい、磯辺せんべいなどです。 その中にサラダ風味せんべいというものがあります。 サラダせんべいともサラダ味せんべいとも呼ばれています。 サラダ風味とは…

骨せんべい

骨せんべいは米菓ではありません。 魚の骨を油で揚げたものです。 魚を三枚に下ろしたときに骨の間にはまだ身が残っています。 これを捨ててしまうのはもったいない話です。 マグロのような大型の魚は解体した後の骨の周りに身がたっぷり残ります。 これを貝…

南部せんべい

南部せんべいはうるち米粉ではなく小麦粉から作られます。 小麦粉と水と塩を混ぜて練った生地を丸い鋳型で焼き上げます。 青森県八戸地方から岩手県北部にかけて広く食べられています。 素朴な味わいが愛されているせんべいです。 南部せんべいという名称は…

お煎餅の由来

お煎餅がいつ頃から作られるようになったのか詳しくわかっていませんが いろいろな説がある中で埼玉県の草加を起源とする説が有力です。 草加宿は日本橋を起点とする奥州街道、日光街道の二番目の宿場です。 宿場として整備されたのは江戸時代に入ってからの…

フレンチの神様

ジョエル・ロブション氏が亡くなりました。 神様と謳われたフランス料理界の巨匠です。 輝かしい経歴を持つ鬼才でした。 史上最年少でフランス最優秀職人賞を受賞したことはあまりにも有名です。 弱冠30歳のときです。 1981年にはパリのレストラン「ジャマン…

ガリの由来

お寿司屋さんで供されるショウガの甘酢漬けのことをガリといいます。 握り寿司をおいしくいただくには欠かせない存在です。 お寿司とお寿司の間にガリを食べると口の中がさっぱりして 味覚がリセットされる感じがします。 そのおかげで次に食べるお寿司の味…

沢庵漬けと沢庵和尚

沢庵漬けは干したダイコンを糠と塩に数か月間漬けたものです。 日本の伝統的な漬け物の一つです。 この沢庵漬けを最初に作ったのは誰でしょうか。 一説によると沢庵和尚が考案したと伝えられています。 だから沢庵漬けと名がついたと。 本当にそうでしょうか…