おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

2021-01-01から1年間の記事一覧

北半球にしか生息しないサケがなぜチリから輸入されるのか

ギンザケは低温を好む魚です。 千島列島よりも北の海域を回遊しています。 ごく稀に知床あたりで獲れることがありますが、 北海道以南の河川に遡上することは滅多にありません。 かつては遠洋漁業によって水揚げされていました。 オホーツク海やベーリング海…

サケはなぜ故郷の川に帰ってくることができるのか

淡水域で生まれたサケは、川を下り海に出て回遊します。 数年かけて成長した後に故郷の川に帰ってきます。 しかし外洋で外敵に食べられてしまうこともあります。 稚魚のうち母川に戻ることができるのは数パーセントに過ぎません。 ところで、なぜサケは生ま…

サケの身はなぜ赤いのか

サケの身は鮮やかな赤い色をしています。 いわゆるサーモンピンクです。 しかしサケは赤身魚ではありません。 じつは白身魚です。 赤身魚の色は、赤い色素タンパク質によるものです。 筋肉の中に酸素を蓄える物質です。 常に泳ぎ続ける魚は多量の酸素を必要…

サケとマスの違いは何か

希代の美食家、北大路魯山人は、サケとマスの味の違いについて サケよりもマスの方がはるかに勝っていると評しています。 ただし昭和初期の話であり、現在ほどサケとマスの種類は多くありません。 当時はサケといえばシロザケ、マスといえばサクラマスのこと…

出世する魚と出世しない魚

成長とともに名前が変わる魚を出世魚といいます。 ブリやスズキやボラは代表的な出世魚です。 なぜ出世魚は名前が変わるのでしょうか。 まず、体が大きいことがその理由の一つだと思います。 スズキもボラも体長1メートル近くまで成長します。 ブリに至って…

ブリの語源は何か

ブリの語源については諸説があり、詳しくわかっていません。 身が太っているから「ミフトリ」が「ブリ」になったという説や 身がぷりぷりしているから「プリ」が「ブリ」になった説があります。 また雪が降る季節に旨いから「降り」が「ブリ」になったという…

ブリ大根に一つだけ不満があるとすれば

ブリ大根はブリのアラと大根を炊き合わせた料理です。 数あるブリ料理の中でも広く庶民的に愛されています。 寒い季節にはブリが旬を迎えます。 それを待つように大根も美味しくなります。 美味しいブリ大根を作るには新鮮なブリが必要です。 ブリの切身がお…

アラの鍋は贅沢か貧相か

魚の身を下ろした残りをアラと言います。 魚の骨と頭とヒレの部分です。 食べるところは少ないのですが、旨みがたっぷり残っています。 捨ててしまってはもったいない部分です。 アラは鍋料理に使うと美味しくいただけます。 まずは汚れと生臭みを取り除かな…

家庭であん肝を美味しく料理する方法

あん肝は居酒屋さんの定番メニューとしてお馴染みですが、 家庭でも美味しく料理することができます。 その秘訣は下準備にあります。 料理する前にしっかり処理することがコツです。 魚屋さんで売られているあん肝はすでに血抜きされています。 乳白色のつや…

あん肝はフォアグラより美味しいのか

江戸時代に「三鳥二魚」と呼ばれる五大珍味がありました。 三鳥とはツルとバンとヒバリ、二魚とはタイとアンコウです。 水戸藩から皇室に献上されていたそうです。 また、昔から鍋料理は「東のアンコウ、西のフグ」と言われます。 フグと並び称されるほどで…

アンコウの七つ道具とは何か

アンコウはほとんど捨てるところがない魚です。 頭と背骨以外は全て食べられます。 頭と背骨でさえ出汁を取るのに使われます。 解体した部位は、「アンコウの七つ道具」と呼ばれています。 その七つとは、ヤナギ、カワ、水袋、キモ、ヌノ、エラ、トモです。 …

アンコウはなぜ吊るし切りにするのか

加藤楸邨がアンコウを詠んだ有名な俳句があります。 鮟鱇の 骨まで凍てて ぶちきらる 「ぶちきらる」という荒々しい表現が何とも印象的です。 いかにも厳ついアンコウを捌くときの豪快な様子がうかがえます。 アンコウは寒い季節になると旬を迎えます。 冬に…

舞茸を食べると本当に舞うのか

今昔物語集には、舞茸を食べた人が舞ってしまう奇怪な話が出てきます。 第二十八巻の「尼共山に入り茸を食ひて舞ひし語」がそれです。 今は昔、京に住む木こりたちが北山に出かけて道に迷ってしまいました。 すると、山中から四、五人の尼が舞い踊りながらこ…

きりたんぽ鍋に必ず入る素材と入れてはいけない素材

きりたんぽ鍋に必ず入る素材といえば、もちろんきりたんぽですが、 他にどんな素材を使うのでしょうか。 比内地鶏、舞茸、芹、ゴボウ、長ネギは必ず入るようです。 他に里芋や糸コンニャクや油揚げが入ることもありますが、 あまり具沢山にしない方がよいと…

きりたんぽ鍋は本当に比内鶏を使うのか

きりたんぽ鍋は秋田の郷土料理です。 鶏ガラの出汁と醤油味のしみじみしした鍋料理です。 身も心も温まります。 きりたんぽ鍋に使われる鶏は、秋田の比内地鶏です。 比内鶏ではなく、比内地鶏です。 比内鶏は、古くから秋田県北部で家禽として飼育されてきま…

きりたんぽの語源は何か

きりたんぽを漢字で書くと「切短穂」です。 「短穂」とは綿を丸めて布で包んだものを指します。 これを槍の先に取り付けたものが「たんぽ槍」です。 古くから稽古用の槍として用いられてきました。 きりたんぽは、たんぽ槍の形状に似ているので名づけられま…

薩摩汁は本当に薩摩鶏を使うのか

薩摩汁は鹿児島の郷土料理です。 鶏肉と野菜を煮て味噌仕立てにした料理です。 薩摩芋や薩摩揚げが入った料理ではありません。 鹿児島では昔から闘鶏が盛んに行われていました。 薩摩武士の士風高揚のためといわれています。 闘鶏は、どちらかの鶏が死ぬまで…

たぬき汁は本当にたぬきを使うのか

「あんたがたどこさ」という手毬歌があります。 地域によって多少歌詞が違いますが、私が知っているのはこんな歌です。 あんたがたどこさ 肥後さ 肥後どこさ 熊本さ 熊本どこさ 船場さ 船場山には たぬきがおってさ それを猟師が 鉄砲で撃ってさ 煮てさ 焼い…

のっぺい汁ののっぺいとは何か

のっぺい汁は日本各地に伝わる郷土料理です。 里芋、大根、ニンジン、シイタケ、豆腐、コンニャクなどの具を すまし汁に仕立てて葛粉や片栗粉でとろみをつけたものです。 ゴボウ、レンコン、油揚げ、鶏肉、蒲鉾が入ることもあります。 とろみをつけないこと…

けんちん汁のけんちんとは何か

けんちん汁は、大根、ニンジン、ゴボウ、里芋、豆腐、コンニャクを 胡麻油で炒めて出汁で煮込み、醤油で味を調えたすまし汁です。 地域によって多少具材が異なり、ネギやシイタケが入ることがあります。 しかし元来は精進料理ですから、肉類や魚介類は一切使…

味噌汁の具として愛される素材

私たちにとって味噌汁はたいへん身近な料理ですが、 味噌汁の具の中で最も愛されている素材は何でしょうか。 一番人気が高い味噌汁の具は豆腐だそうです。 ここ数十年来ずっと第一位を守り続けています。 第二位はワカメですが、豆腐には遥かに及びません。 …

竹に虎とはどんな料理か

「牡丹に唐獅子、竹に虎」という図柄があります。 調和の取れた相性のよい組み合わせとされています。 梅に鶯、松に鶴、紅葉に鹿などと同様に昔から伝わる図柄です。 京都南禅寺の方丈の欄間の両面透かし彫りは有名です。 名工と謳われた左甚五郎の作と伝え…

土用丑の日に鰻を食べてはいけない理由

土用丑の日に鰻を食べる習慣は昔からありますが、 最近は、土用丑の日に鰻を食べるべきではないという意見があります。 なぜ食べてはいけないのか疑問に思われるかもしれません。 しかし反対派の意見にも一理あります。 それは食品ロスを生み出す原因となっ…

土用丑の日に鰻を食べる理由

土用丑の日に鰻を食べる習慣が生まれたのは江戸時代です。 平賀源内が発案したという話は有名です。 もともと鰻は寒い季節に旬を迎えます。 夏にはどうしても消費が落ちてしまいます。 しかも暑い季節はさっぱりしたものが食べたくなります。 蒲焼きの濃厚な…

鰻丼と鰻重

鰻丼と鰻重の違いは何でしょうか。 どちらもご飯の上に鰻の蒲焼きを乗せてタレをかけた料理です。 しかし食器の形状が料理の質に大きく影響します。 丼は陶器ですから保温性が高いのが特徴です。 お重は漆器ですから、その点はやや不利です。 しかしお重は何…

あられ丼と海鮮丼

食べものとは関係のない気象現象の用語ですが、 「みぞれ」とは雪と雨が混ざったものを指します。 「ひょう」と「あられ」は積乱雲から降ってくる氷の粒です。 直径5ミリ以上のものを「ひょう」、それ未満を「あられ」と呼びます。 お菓子の「あられ」は「あ…

みぞれ丼とみぞれ煮

大根おろしを和えた料理を「みぞれ」といいます。 みぞれ丼、みぞれ煮、みぞれ鍋などがそうです。 みぞれに組み合わせる食材には決まりがありません。 さまざまな食材を使ってみぞれを作ることができます。 一般には鶏肉や豆腐やナスを使うみぞれが多いよう…

中華丼と中華まん

中華丼はご飯の上に八宝菜を盛りつけた料理です。 ご飯に盛らないときは普通の八宝菜定食です。 八宝菜はもともと広東料理といわれています。 肉や魚介類や野菜を使った五目うま煮の一種です。 八宝菜に使われる具材は必ずしも八種類とは限りません。 八とい…

天津丼と天津甘栗

天津丼や天津飯と呼ばれる料理があります。 蟹玉をご飯に乗せて甘酸あんをかけた料理です。 主に東日本では天津丼、西日本では天津飯と呼ぶそうです。 しかし中国の天津市には天津丼も天津飯もありません。 日本で考案されたというのが定説です。 こうした料…

イースターの卵

イースターとは、キリスト教のお祭りです。 復活祭とも呼ばれます。 春分の日の後の最初の満月の次の日曜日と決められています。 ですから毎年、イースターの祝日は異なります。 四月の初旬から中旬になることが多いようです。 イースターという名称は、「エ…