おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

Rのつかない月に牡蠣を食べない理由

冬は牡蠣が美味しい季節です。

煮ても焼いても生でも美味しいです。

 

生牡蠣には紅葉おろしとアサツキがよく合いますが、

欧米では生牡蠣にレモンを搾るのが定番です。

 

今でこそ日本の刺身や寿司は世界的に知られていますが、

もともと欧米の人々は魚介類を生で食べません。

 

唯一例外なのが牡蠣です。牡蠣だけは生で食べます。

というよりも、生以外で牡蠣を食べることがありません。

 

生が最高に美味しい食べ方であると信じているようです。

ですから、あまり手の込んだ牡蠣料理を作りません。

 

日本でいえば、生の本マグロを珍重するようなものでしょうか。

新鮮で質のよい本マグロにはあまり手を加えません。

 

それと同様に、欧米の人々にとって牡蠣といえば生牡蠣ですが、

もちろん一年中牡蠣を食べるわけではありません。

 

一般にはRのつく月に牡蠣を食べると伝えられています。

つまり9月(September)から翌年の4月(April)までです。

 

5月(May)6月(June)7月(July)8月(August)には

Rがつかないので牡蠣を食べません。

 

その理由の一つは、食中毒を防ぐためです。

とくに夏の暑い季節に生食は危険です。

 

もう一つの理由は、牡蠣が産卵期を迎えるからです。

生殖巣に栄養分が取られ、身が痩せてしまいます。

 

食べられないことはないのでしょうが、美味しくありません。

次の世代の美味しい牡蠣の成長を待つ方が賢明です。

 

牡蠣の旬はやはり寒い季節であると思われていますが、

それはあくまでマガキの場合です。

 

牡蠣の種類には、夏に旬を迎えるイワガキもあります。

マガキとはまた違った風味を持つ牡蠣です。

 

近年は、冷蔵技術も輸送技術も大きく進歩しましたので、

Rがつかない月でも牡蠣を美味しくいただけます。