土用丑の日に鰻を食べる習慣は昔からありますが、
最近は、土用丑の日に鰻を食べるべきではないという意見があります。
なぜ食べてはいけないのか疑問に思われるかもしれません。
しかし反対派の意見にも一理あります。
それは食品ロスを生み出す原因となっているからです。
鰻の売れ残りや食べ残しが多く、大きな社会問題となっているのです。
夏の土用丑の日には、一年中で最も鰻の需要が高まります。
売れるものを売るのがビジネスですが、あまりに一極集中し過ぎます。
鰻屋さんだけでなく、一般の飲食店やお弁当屋さんでも鰻を売り出します。
デパートやスーパーマーケットやコンビニエンスストアでもそうです。
いったん鰻丼や鰻弁当に調理してしまうと消費期限が限られてしまいます。
期限が過ぎれば廃棄せざるを得ません。もったいないことです。
近年、鰻の蒲焼きに使われる二ホンウナギは、資源が激減しています。
大切な日本の食文化と将来の持続可能な食料資源を守るために、
夏の土用丑の日に鰻を食べる習慣を見直すことが必要です。
そもそも土用は夏だけではありません。
ですから年に4回の土用があります。
土用に鰻を食べる機会を分散してみてはどうでしょうか。
そうは言っても、「夏に鰻」は定着した食文化でもあり、
夏バテしないように精をつけるという意味もあります。
夏の土用に鰻を食べていけないわけではありませんが、
せめて丑の日に集中しない配慮があってもいいと思います。
「土用丑の日ウナギの日」は、たしかに語呂がいい言葉ですが、
「ウ」がつく食べものであれば何でもよいという説もあります。
ウシの肉、ウマの肉、ウサギの肉を使った料理はどうでしょうか。
魚介類ならばウグイ、ウニ、ウバガイ、ウマヅラハギがあります。
ウメボシやウリやウルイでも構いません。ウドンも美味しいです。
あまり知られていませんが、山形にはウコギご飯という料理もあります。
鰻を食べる時期を選ぶだけでなく、食べるものを選ぶ発想も大事です。
私のお薦めは「ウルメイワシの蒲焼き」です。
目が潤んでいるように見えるのでウルメと呼ばれます。
刺身にすると絶品で、マイワシより旨いという人もいます、
しかし鮮度が落ちるのが早く、鮮魚としてあまり流通していません。
マイワシと同様に一年中市場に出回っていますが、
じつは寒い季節に旬を迎えます。
しかしそれは鰻も同じことです。
しかも鰻に比べるとはるかに廉価で、料理も簡単です。
手開きにしたウルメイワシをフライパンで焼き、
醤油、味醂、砂糖、日本酒を合わせて蒲焼きにします。
昔から「串打ち三年、割き八年、焼きは一生」と言われるほど
鰻の蒲焼きは難しく、修行を積んだ鰻職人でなければ作れません。
しかしウルメイワシの蒲焼きは簡単に家庭でも作れます。
ぜひ今年から「土用丑の日ウルメの日」をお試しください。