おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

ウズラの卵

ウズラはキジ科の鳥類に中で最も小さい鳥です。

家禽として飼われている鳥の中でも最小です。

 

和名のウズラは、埋まる姿から名づけられたといわれています。

 

アジア各地に分布していますが、学術名にジャポニカという語がつく種類が

私たちにお馴染みのウズラです。

 

ウズラの卵の表面にはまだら模様がありますが、

これは一般に「ウズラ斑」と呼ばれています。

 

ウズラ豆やウズラ餅はこの模様に似ていることから命名されました。

 

面白いことに同じ親鳥から生まれる卵は皆同じ模様です。

生体認証に役立ちそうです。

 

卵は優等生

卵は「食材の優等生」、「物価の優等生」と言われています。

栄養価が高く、しかも安価だからです。

 

通常は10個1パックが200円から300円で売られています。

1個当たり20円から30円といったところです。

 

安売りするときは1個当たり10円ほどに下がることもあります。

 

じつはこの価格は数十年もの間あまり変わっていません。

今から60年以上前の昭和30年代もこの水準でした。

 

昭和の世相を描いた四コマ漫画の名作「サザエさん」に、

カツオがお遣いを頼まれて卵を買いに行く場面があります。

 

その当時の卵は1個ずつばら売りされていました。

割れないように卵屋さんが古新聞で包んでくれました。

 

漫画の中ではたしか値段が15円か20円だったように覚えています。

現在の物価が当時の十数倍であることを考えると安定した価格です。

 

逆に言えば、昔は卵が高級食材だったということです。

今の価格に換算すると1個150円から200円ではないでしょうか。

 

ですから卵焼きはたいへんなご馳走です。

子どもたちにも人気の料理でした。

 

「巨人、大鵬、卵焼き」という言葉が残っているほど

昭和時代には絶大な人気を誇っていました。

 

現代はカレーやハンバーグなどの人気メニューに押され気味ですが、

庶民的に愛されている料理であることに変わりありません。

 

卵はおかずとしても優等生です。

 

伊達巻き

伊達巻きは、甘いフワフワの玉子焼きです。

おせち料理の一品としてお馴染みです。

 

独特の渦巻きの形は、熱いうちに「巻き簾」で巻いて作ります。

 

フワフワの秘密は玉子に海老や白身魚のすり身を入れるからです。

はんぺんを使うこともあるそうです。

 

焼き方も普通の玉子焼きとは異なります。

溶いた玉子をフライパンに流し込み、フタをして弱火で蒸し焼きします。

 

カステラのようにオーブンで焼くこともあります。

そのため食感がカステラによく似ています。

 

一説によると伊達巻きの発祥は長崎であるとも言われています。

 

ところで伊達巻きの名前の由来は何でしょうか。

伊達政宗の好物だったからという説が有力ですが、真偽はわかりません。

 

伊達もの、伊達男、伊達飾りという言葉があるように、

伊達政宗はおしゃれで派手好きな武将として知られています。

 

見映えのよいものには伊達という名がつけられることが多いので

伊達巻きもそのような命名だったと考えられます。

 

もしかしたら、「だし巻き玉子」をおしゃれに巻いたものを

「伊達巻き玉子」と呼んだのかもしれません。

 

おせち料理の重箱の中でも伊達巻きは一際目立っています。

 

盛りつけるときは、渦の向きは右巻きにするのが正しいそうです。

つまり「の」の字に見えるように盛りつけます。

 

おせち料理には一つ一つ意味がありますが、伊達巻きは「学業成就」です。

昔の書籍である「巻き物」に似ているからです。

 

ぜひ受験生は、お正月に伊達巻きを食べて頑張ってほしいと思います。

 

卵かけご飯

海外では一般に鶏卵を生で食べることはありません。

たいていは加熱調理します。

 

それは「サルモネラ菌」による食中毒を避けるためです。

 

日本では生で食べることを前提に鶏卵を生産しています。

 

そのため出荷前に卵を完全洗浄して殺菌しています。

次亜塩素酸ナトリウム」という消毒剤を使うこともあります。

 

しかも一つ一つの卵に産卵日や賞味期限を表示しています。

 

もちろん生で食べる以上は、絶対に安全ということはありません。

それは卵だけでなく、全ての生鮮食料品に言えることです。

 

しかし高い安全基準が設けられていることはありがたいことです。

おかげで日常的に生卵を食べることができます。

 

最も一般的な生卵の食べ方といえば「卵かけご飯」です。

他の国ではほとんど見られない日本特有の食習慣です。

 

卵を溶いて醤油を加えご飯にかけて混ぜながら食べます。

単純ながら深い滋味のある料理です。

 

料理といえるかどうかわかりませんが。

 

卵かけご飯にもちょっとしたコツがあります。

熱々の炊き立てご飯を使わないことです。

 

ご飯が熱すぎると卵が熱で半熟状態に固まってしまいます。

そうなると舌触りが悪くなってしまいます。

 

やはり卵かけご飯はチュルチュルとした食感が魅力です。

 

もう一つのコツは急いで食べることです。

時間が経つとご飯の粒が卵の水分を吸ってふやけてしまいます。

 

麺類でいうところの「のびた」状態になります。

これまた舌触りが悪くなってしまいます。

 

多少行儀が悪くてもすするように食べるのが正しい食べ方です。

 

最近は日本にやってくる外国の観光客にも人気だそうです。

今までに経験したことのない新しい食べ方なのかもしれません。

 

月見丼

月見そばや月見うどんのように卵を乗せた料理を「月見」と呼びます。

月見丼もその一つです。

 

ご飯の上にただ卵が乗っているだけではありません。

肉や魚や野菜などを使った料理と組み合わせた丼です。

 

たとえば鶏肉のそぼろやイカの納豆和えやキノコの甘辛煮などです。

それらをご飯に乗せて真ん中に卵を添えると月見丼になります。

 

一つの料理名でこれほど多彩なメニューができる丼は他にありません。

月見丼は見た目も味も楽しめる創造性豊かな丼です。

 

ところで、究極の月見丼というものがあります。

目玉焼きがご飯に乗っているだけの丼です。

 

正しくは「目玉焼き丼」というべきかもしれません。

 

熱々の目玉焼きに醤油をたらりとかけていただくのが最高です。

卵の黄身と醤油がご飯と相まって絶妙の美味しさです。

 

卵かけご飯とはまた別の楽しみ方です。

ぜひお試しください。

 

木の葉丼

木の葉丼は衣笠丼に似ています。

 

お揚げの代わりに、短冊に切った蒲鉾を使った丼です。

薩摩揚げや竹輪を使うこともあるそうです。

 

衣笠丼と同じように甘辛く煮て卵でとじてご飯に乗せます。

シイタケやタケノコが入ることもあります。

 

三つ葉を散らすところが木の葉丼のポイントです。

 

蒲鉾の紅白、卵の黄色、青ネギと三つ葉の緑が色鮮やかです。

まさに木の葉のように美しい丼です。

 

衣笠丼の発祥は京都ですが、木の葉丼の発祥はわかっていません。

しかし関西地方を中心に昔から親しまれてきた丼です。

 

木の葉丼の具をうどんに乗せても美味しそうですが、

木の葉うどんというのは聞いたことがありません。

 

しかし美味しいものを見逃さない関西の食通の人々の間では、

じつはもう木の葉うどんが一般的なのかもしれません。

 

衣笠丼

衣笠丼は京都発祥の丼物です。

 

甘辛く煮たお揚げと青ネギを卵でとじてご飯に乗せた丼です。

青ネギには九条ネギを使うのが京都流です。

 

衣笠丼の名前は京都の衣笠山に由来します。

 

衣笠山は、宇多天皇が真夏に雪景色を見たいと所望されたときに

白絹をかけた伝承から「絹かけ山」とも呼ばれています。

 

それに見立てて衣笠丼と命名されたと伝えられています。

ですから「絹笠丼」と表記することもあります。

 

卵でとじないものを「きつね丼」と呼ぶそうです。

きつねうどんの具がそのままご飯に乗った感じでしょうか。

 

地域によっては、卵でとじるものも「きつね丼」と呼ぶそうです。

その辺りは、きつねだけに変幻自在です。