
羊肉には「ラム」と「マトン」の二つがあります。
種類が違うわけではなく、年齢による違いです。
およそ生後1年未満の羊をラム、生後1年以上の羊を
マトンと呼んでいます。
しかし、羊はたいてい群れで放牧して飼育しますので、
一頭ずつ正確な年齢を把握することができません。
そこで門歯の有無を基準にして、まだ門歯がなければラム、
左右1本ずつ門歯が生えればマトンに分類します。
ただし、その基準は国によって異なり、主要な生産国である
オーストラリアとニュージーランドでも多少違うそうです。
ラムとマトンを区別する理由は、肉質が異なるからです。
当然、ラムとマトンの料理方法も異なります。
ラムは肉が柔らかく、淡白でクセが少ないのが特徴です。
マトンは肉が引き締まり、強い旨みとコクがあります。
一番大きな違いは、何と言っても羊肉の「臭み」です。
ラムに比べると、マトンには独特の臭みがあります。
この臭みは、「グラス臭」とも呼ばれています。
羊のエサとなる牧草が主な要因です。
生まれたばかりの羊には門歯がなく、牧草を食べません。
母乳で育ちますから、まだ臭みがありません。
ところが、門歯が生えて牧草を食べるようになると、
肉の臭みが生じてきます。
そのためマトンを料理するときは、香辛料を効かせて
肉の臭みを消す処理が必要です。
また、臭みの成分は脂肪に多く含まれているので、
焼きながら脂を落とす料理も適しています。
古くから羊肉を食用とする地域で、ケバブのような料理が
伝統的に普及しているのは理に適ったことなのです。
ところで、羊肉にラムとマトンの二つがあるのに、
なぜ豚肉はポークだけなのでしょうか。
その理由は、豚が草食性ではなく雑食性だからです。
羊のような「グラス臭」を生じないのです。
また、豚は羊と違って大人に成長するまでの期間が短く、
生後8か月頃には、もう子を産む世代になります。
そのため、豚が出荷される時期も羊よりかなり早く、
生後6か月を過ぎる頃から出荷が始まります。
豚の平均寿命が10年から15年であることを考えると、
市場に出荷される豚肉はほとんどが子豚です。
子豚には、ラムとマトンのような年齢の差がないので、
ポークという名称だけで十分なのです。