おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

坂本龍馬が愛した軍鶏鍋はどのような鍋か

坂本龍馬の好物が軍鶏鍋だったことはよく知られています。

暗殺された最期の日も軍鶏鍋を食べようとしていました。

 

注文した鍋が届く前に刺客の襲撃を受けたと伝えられています。

司馬遼太郎の小説「竜馬が行く」ではそう描かれています。

 

軍鶏(シャモ)とは江戸時代にタイから伝わった鶏の一種です。

タイの旧国名シャム王国」に由来します。

 

漢字で「軍鶏」と表記するように、もともとは闘鶏用でした。

たいへん気性が荒く、闘鶏に適した獰猛な鶏です。

 

しかし闘鶏で負けた軍鶏は、その場で軍鶏鍋の材料になりました。

筋肉質で歯応えがあり、闘鶏だけでなく食用にも適しています。

 

現在は動物愛護の観点から闘鶏が禁止されています。

軍鶏は食用と観賞用にのみ飼育されています。

 

一般に軍鶏鍋は、濃い目の醤油味のすき焼き風の鍋料理です。

ネギや豆腐などを一緒に入れることが多いようです。

 

また、軍鶏のモツや軍鶏のつくねを入れることもあり、

笹掻きゴボウを入れることもあります。

 

熱々のところを汗をかきながらいただくと精がつきます。

鍋料理であっても、軍鶏鍋は夏にも食べられます。

 

夏目漱石の「こころ」にも軍鶏鍋が登場します。

若き日の「先生」が暑い夏に両国で食べています。

 

坂本龍馬は軍鶏鍋にニンニクを入れるのを好んだそうです。

それが彼の活力の源だったのではないでしょうか。

 

もっとも坂本龍馬土佐藩の出身ですから、

ショウガも入れていたかもしれません。

 

志半ばに命尽きた幕末の志士ですが、その生き方は魅力的です。

大好きな軍鶏鍋を食べて一生懸命頑張った生涯でした。