おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

ザリガニの「ザリ」とは何か

ザリガニはカニと同じように五対の足を持ちますが、

カニではなく、エビの仲間です。

 

しかし、カニもザリガニもエビ目の生物ですから、

近い種であることは変わりません。

 

生態もカニとザリガニはよく似ています。

淡水域にも海水域にも生息しています。

 

ところで、ザリガニの「ザリ」とは何でしょうか。

いくつかの説がありますが、「シザリ」もその一つです。

 

「シサリ」ともいいますが、漢字で「退り」と書きます。

後ずさりすることです。

 

ザリガニは後ずさりして動くのが得意ですから、

「シザリガニ」と呼ばれたのかもしれません。

 

もう一つは「イザリ」です。漢字で「躄り」と書きます。

尻をついたままの状態で進むことです。

 

お殿様に「もちっと近う寄れ」と命じられた家来が、

「ははっ」と畏まってにじり寄るあの動きです。

 

ザリガニの動きが躄っているように見えたので、

「イザリガニ」と呼ばれたのかもしれません。

 

じつは「イザリ」は今では差別用語として扱われています。

一般的に使われることはありません。

 

歩行機能に障害のある人を差別する不適切な表現であると

考えられているからです。

 

かつて「イザリウオ」という魚がいましたが、

2007年に日本魚類学会が名称を変更しました。

 

今では「カエルアンコウ」といいます。

 

同じく「メクラウナギ」も名称が変わりました。

「メクラ」が差別用語だからです。

 

今では「ヌタウナギ」といいます。

 

差別を根絶する取り組みは大切ですが、

何だか混乱してしまいそうです。

 

国語辞典には「イザリウオ」や「メクラウナギ」が

今でも記載されています。

 

また、魚類の名称だけ変えても、他の生物の名称が

従来のままでは意味がありません。

 

もしザリガニの語源が「イザリガニ」であるならば、

ザリガニの名前を変えるべきです。

 

たとえば「バルタンガニ」はいかがでしょうか。

 

えっ、名前の由来ですか。

もちろん、あの有名な星人に敬意を表して。