イワシとサバとサンマは青魚三兄弟です。
今回はイワシの話です。
イワシは三兄弟の中でも特に日本の食文化に大きく貢献しています。
大衆魚として古くから日本人に愛されてきました。
当時は下賤の魚として扱われ、高貴な方々はイワシを口にしませんでした。
イワシの語源が「いやしい」から来ていると説もあるほどです。
ところが夫の藤原宣孝に見つかってしまいました。
君はこんな卑しい魚を食べるのかと宣孝は問い詰めます。
そのとき紫式部は和歌でこう答えました。
日のもとに はやらせ給ふ いわしみず まいらぬ人は あらじとぞ思ふ
現代語でいうと、
日本ではお参りしない人がいないと思うほど石清水八幡宮は流行っています。
同じようにイワシを食べない人はいないと思います。
という意味です。
イワシと「いわしみず」が掛け詞になっています。
咄嗟に和歌で答えるとはさすがに才女ですね。
これには宣孝も返す和歌が思い浮かばず、その後はイワシを食べることを許しました。
それ以来、女房詞でイワシのことを「むらさき」と呼ぶようになったそうです。
イワシの種類にはマイワシ、ウルメイワシ、カタクチイワシなどがあります。
いずれも日本近海で水揚げされます。
マイワシは漁獲量の増減が大きい魚として知られています。
海洋環境の変化によって数十年周期で変動を繰り返しています。
1988年には約450万トンのマイワシの漁獲量を記録しました。
この年の水産物全体の漁獲量の4割を占めます。
それをピークにしてその後は漁獲量が激減しました。
2005年にはわずかに2.5万トンしか獲れませんでした。
ここ数年は少しずつ回復傾向にあります。
最近魚屋さんで見かけるマイワシもお手頃なお値段です。
活きのよいピカピカのイワシを見るとうれしくなります。
夫に隠れても食べたくなる紫式部の気持ちがよくわかります。