おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

カツオはなぜ一本釣りするのか

カツオの一本釣りは昔から行われている漁法です。

文字通り、一本の釣り竿で一匹ずつ釣り上げます。

 

昔は魚群探知機がありませんでしたから、

目印になるのは、カツオドリでした。

 

カツオドリはイワシなどの小型の魚をエサとする海鳥です。

カツオもイワシなどの小型の魚をエサとしています。

 

カツオがイワシの群れを見つけると、海面に追いつめていき、

逃げ場がなくなったところを捕食します。

 

海面に追われて跳ねるイワシを狙って集まるのがカツオドリです。

ですから、カツオドリがいるところには必ずカツオがいます。

 

漁師さんはそれを目印にするのです。

現在は魚群探知機があるのでカツオドリを探す必要はありません。

 

カツオの群れを見つけたら、まず初めに海面に水を撒きます。

水面が跳ねるのを見て、カツオはイワシと勘違いします。

 

カツオが海面に集まったところに今度はエサを撒きます。

カツオは口に入るものは何でも食らいつきます。

 

疑似餌のついた釣り針も丸飲みにします。

それを一気に一本釣りにします。

 

釣り針には「返し」がついていません。

すぐに外れるようになっています。

 

釣り上げられたカツオは反動で釣り針が外れます。

そして次々と甲板を飛び交います。

 

たたきつけられてカツオの身が傷つかないように

甲板にはクッションが敷かれています。

 

何とも豪快な勇ましい漁法ではありますが、

漁獲量は決して多くはありません。

 

近代的な巻き網漁法に比べると効率の悪い漁法です。

では、なぜ今でも一本釣りをするのでしょうか。

 

それは、カツオの品質が高いからです。

 

巻き網漁法で大量のカツオを一網打尽にすると、

カツオ同士が激しくぶつかり合います。

 

せっかく水揚げしてもカツオの身が柔らかく崩れてしまい、

市場で値がつかないこともあります。

 

一本釣りであれば、そのようなことがありません。

カツオ特有のもちもちした食感が味わえます。

 

また一本釣りのよい点は、根こそぎ獲り尽くさないことです。

水産資源を守る優れた漁法なのです。

 

環境に配慮して持続可能な水準で漁獲が行われているとして

一本釣りは、海のエコマークの認証を受けています。

 

美味しく魚を食べるためには、乱獲しないことが大切です。

一本釣りはまさに無駄のない漁法であるといえます。