おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしいことばを探してみましょう。

日本人はニシンの卵が大好きだという評判が誤解されて生まれた料理名

 

日本人ほど魚卵が好きな国民は世界に類を見ません。

タラコもスジコもカズノコも大好きです。

 

タラコは、一般的にマダラではなくスケトウダラの卵です。

卵巣ごと塩漬けにして作ります。

 

もともと赤い色をしていますが、さらに色よくするために、

着色料や発色剤を使うことがあります。

 

タラコを唐辛子に漬けたものは「明太子」と呼ばれます。

韓国でスケトウダラを明太と呼ぶのに由来します。

 

スジコは、サケやマスの卵巣を塩漬けにしたものです。

ねっとりした食感と濃厚な味わいが特徴です。

 

生のスジコを一粒ずつほぐしたものはイクラと呼ばれます。

イクラはロシア語で魚卵のことを意味します。

 

カズノコは、ニシンの卵を干したり塩漬けにしたものです。

「数の子」とも表記します。

 

ニシンは「カド」「カドイワシ」の異名を持つことから、

「カドノコ」から転訛したという説が有力です。

 

カズノコは子孫繫栄の縁起物として、正月の御節料理や

婚礼の祝賀の儀式には欠かせません。

 

しかし、カズノコを珍重する食文化は日本に限られ、

世界的に見ると食用にされることはありません。

 

北米や北欧など、ニシンがよく獲れる地域でさえ、

卵は捨てられていました。

 

転機が訪れたのは、日本でニシンの漁獲量が激減した

昭和30年代のことです。

 

ニシンの漁獲量が減れば、当然カズノコも減ります。

国内産だけでは需要を満たすことができません。

 

最初に日本にカズノコを輸出したのはアラスカ州です。

日本向けにカズノコ加工場も建設されました。

 

今まで廃棄していたニシンの卵が、貴重な商品として

日本に輸出できることに気づいたのです。

 

後を追うように、カナダ、アイルランド、オランダが、

日本にカズノコを輸出し始めました。

 

同時に「日本人はニシンの卵が大好きだ」という評判が、

世界中に広がっていきました。

 

その評判が誤解されて名づけられた料理があります。

ポーランドの「シレチ・ポ・ヤポンスク」です。

 

ポーランド語で「日本風ニシン」という意味だそうです。

酢漬けニシンと茹で卵をマヨネーズで和えた料理です。

 

ポーランドでは人気にあるニシン料理だそうですが、

なぜ「日本風」なのでしょうか。

 

その理由は、「日本人はニシンの卵が大好きだ」が誤って、

「日本人はニシンと卵が大好きだ」と伝わったからです。

 

そのため、ニシンと卵を組み合わせた料理の名前が、

「日本風」と呼ばれるようになったそうです。

 

もしこの料理が日本に紹介されるようになると、

果たして何と呼ばれるのでしょうか。