おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしいことばを探してみましょう。

土用丑の日に鰻を食べるべきではないという意見があるのはなぜか

 

夏の土用丑の日には、昔から鰻を食べる習慣があります。

江戸時代に平賀源内が発案したという説が有力です。

 

しかし最近では、「土用丑の日に鰻を食べるべきではない」

という意見が増えています。

 

なぜ食べるべきではないのか疑問に思うかもしれませんが、

反対派の意見にも一理あります。

 

それは、鰻の売れ残りや食べ残しが大量に生じるために、

フードロスの原因となっているからです。

 

夏の土用丑の日は一年で最も鰻の需要が高まります。

鰻専門店だけでなく、一般の店でも鰻を売り出します。

 

いったん鰻丼や鰻重に調理すると、消費期限が限られます。

期限を過ぎてしまえば、廃棄せざるを得ません。

 

そうしたフードロスが、現在大きな社会問題になっています。

土用丑の日に鰻の消費が一極集中することが原因です。

 

そのため、最近は「土用丑の日に鰻を食べるべきではない」

という意見が増えています。

 

近年は二ホンウナギの個体数が激減しています。

環境省絶滅危惧種にも指定されています。

 

大切な日本の食文化と食料資源を守るために、

夏の土用丑の日の習慣を見直す必要があります。

 

そもそも土用は夏だけではありません。土用とは、

立春立夏立秋立冬の直前18日間をいいます。

 

ですから土用は年に4回あります。土用に鰻を食べる

機会を分散してみるのもよい考えです。

 

そうは言っても、「夏に鰻」は定着した食文化です。

夏バテしないように精をつける意味もあります。

 

夏の土用に鰻を食べていけないわけではありませんが、

せめて丑の日に一極集中しない配慮が求められます。

 

じつは、土用丑の日は必ずしも「ウナギ」だけではなく、

「ウ」がつく食材であればよいとも言われています。

 

たとえばウシ、ウマ、ウサギの肉はいかがでしょうか。

魚介類ならウグイ、ウニ、ウマヅラハギがあります。

 

ウメボシ、ウリなどの果実を使った料理でも構いません。

もちろんウノハナ、ウドンも美味しい料理です。

 

山形県の米沢には、ウコギという伝統野菜があります。

季節はずれですが、ウルイ、ウドという山菜もあります。

 

鰻を食べる時期だけでなく、食材を選ぶ発想も大切です。

私のお薦めは、ウルメイワシの蒲焼きです。

 

ウルメイワシはマイワシより体が一回り大きなイワシです。

目が潤んでいるように見えるのでウルメと呼ばれます。

 

刺身にすると絶品で、マイワシより旨いという人もいます。

イワシと同様、価格も手頃で一年中市場に出回っています。

 

ただ鮮度が落ちるのが早く、流通量はあまり多くありませんが、

鰻に比べると、はるかに簡単に料理できるのが魅力です。

 

手開きにしたウルメイワシを皮目からフライパンで焼き、

醤油、味醂、砂糖、日本酒を合わせて蒲焼きにします。

 

鰻の蒲焼きは、修行を積んだ鰻職人でなければ作れません。

昔から「串打ち三年、割き八年、焼きは一生」と言われます。

 

しかし、ウルメイワシの蒲焼きは簡単に家庭でも作れます。

ぜひ今年は「土用丑の日ウルメの日」をお試しください。