大きな専用の釜をリヤカーに積んだ石焼き芋屋さんは冬の風物詩です。 「いしやーきいもー」の美声を聴くと、思わず買い求めたくなります。 近年はこうした石焼き芋屋さんをあまり見かけなくなりましたが、 いつ頃から移動式の販売が始まったのでしょうか。 …
古くから伝わる調理方法には必ず理由があります。 たとえば、竹の子を茹でるときは米糠と鷹の爪を使います。 山菜のアク抜きにはミョウバンを使うと美味しくできます。 ナスの糠漬けに鉄釘を入れておくと色よく仕上がります。 なぜそのように調理するとよい…
ニシンを表す漢字は二種類あります。「鰊」と「鯡」です。 「鰊」という漢字は、東国で獲れる魚を意味します。 東国とは現在の北海道や東北地方を指していました。 それは、まあ納得できる漢字だと思います。 では、「鯡」と書くのはなぜでしょうか 今でこそ…
ニシンは北海道から東北地方にかけて獲れる魚です。 昔は、「カド」「カドイワシ」と呼んでいたようです。 マイワシに似た姿をしていますが、マイワシよりやや大型です。 口元とお腹の部分が角張っているのが特徴です。 それが、「カド」「カドイワシ」の語…
タニシは昆虫ではありませんが、貴重な食料源です。 フランス料理のエスカルゴにも匹敵する食材です。 多才な芸術家であり美食家であった北大路魯山人は、 タニシが大好物だったそうです。 その北大路魯山人は、肝硬変で亡くなりました。 十分に加熱していな…
現在、昆虫食は世界的に注目されていますが、 最も活躍が期待されるのがコオロギです。 将来的に畜産業や水産業の生産量が限界に達する中で、 食糧不足を解決する有効な手段と考えられています。 では、食材としてのコオロギの利点は何でしょうか まず栄養素…
カイコは約五千年前から人間に飼育されてきました。 完全に人間の手で家畜化された唯一の昆虫です。 今では野生に回帰する能力が全く失われてしまいました。 人間の世話がなければ生きていくことができません。 幼虫は桑の葉を食べますが、成虫は何も食べま…
ハチの幼虫に形状が似ているのが、ハエの幼虫です。 通称「ウジ」または「ウジ虫」と呼ばれます。 ハエは、病原菌を媒介する不衛生な害虫として忌避されています。 そのせいか、幼虫もまた成虫と同様に嫌われています。 不潔な虫、不快な虫の代表のように思…
昆虫は、幼虫と成虫の姿がまったく違う種類が少なくありません。 チョウ類や甲虫類など、完全変態を行う昆虫がそうです。 成虫は、広範囲に飛び回って多くの子孫を残す使命がありますから それに適した体のつくりをしています。 一方幼虫は、ひたすら食べて…
イナゴの佃煮については以前にも書いたことがありますが、 昔は全国各地で見られた一般的な食べものでした。 イナゴは稲の害虫ですから、稲作農家にとっては天敵ですが、 同時に、タンパク質の貴重な補給源となっていました。 とくに海から離れた内陸部では…
お正月は元日からの「三が日」だけではありません。 その後もお正月の行事がいくつか続きます。 1月7日には無病息災を願って「七草粥」を食べる習慣があります。 七草粥とは、その名の通り「春の七草」を使ったお粥です。 私は東北の生まれですが、雪深い東…
天智天皇は、飛鳥から近江大津宮に遷都した天皇です。 その近江には不老長寿の果実にまつわる伝説が残っています。 あるとき天智天皇は琵琶湖畔の蒲生野に狩りにでかけました。 するとそこでたいへんな長寿の老夫婦に出会いました。 天智天皇は老夫婦に長寿…
ギンザケは低温を好む魚です。 千島列島よりも北の海域を回遊しています。 ごく稀に知床あたりで獲れることがありますが、 北海道以南の河川に遡上することは滅多にありません。 かつては遠洋漁業によって水揚げされていました。 オホーツク海やベーリング海…
淡水域で生まれたサケは、川を下り海に出て回遊します。 数年かけて成長した後に故郷の川に帰ってきます。 しかし外洋で外敵に食べられてしまうこともあります。 稚魚のうち母川に戻ることができるのは数パーセントに過ぎません。 ところで、なぜサケは生ま…
サケの身は鮮やかな赤い色をしています。 いわゆるサーモンピンクです。 しかしサケは赤身魚ではありません。 じつは白身魚です。 赤身魚の色は、赤い色素タンパク質によるものです。 筋肉の中に酸素を蓄える物質です。 常に泳ぎ続ける魚は多量の酸素を必要…
希代の美食家、北大路魯山人は、サケとマスの味の違いについて サケよりもマスの方がはるかに勝っていると評しています。 ただし昭和初期の話であり、現在ほどサケとマスの種類は多くありません。 当時はサケといえばシロザケ、マスといえばサクラマスのこと…
成長とともに名前が変わる魚を出世魚といいます。 ブリやスズキやボラは代表的な出世魚です。 なぜ出世魚は名前が変わるのでしょうか。 まず、体が大きいことがその理由の一つだと思います。 スズキもボラも体長1メートル近くまで成長します。 ブリに至って…
ブリの語源については諸説があり、詳しくわかっていません。 身が太っているから「ミフトリ」が「ブリ」になったという説や 身がぷりぷりしているから「プリ」が「ブリ」になった説があります。 また雪が降る季節に旨いから「降り」が「ブリ」になったという…
ブリ大根はブリのアラと大根を炊き合わせた料理です。 数あるブリ料理の中でも広く庶民的に愛されています。 寒い季節にはブリが旬を迎えます。 それを待つように大根も美味しくなります。 美味しいブリ大根を作るには新鮮なブリが必要です。 ブリの切身がお…
魚の身を下ろした残りをアラと言います。 魚の骨と頭とヒレの部分です。 食べるところは少ないのですが、旨みがたっぷり残っています。 捨ててしまってはもったいない部分です。 アラは鍋料理に使うと美味しくいただけます。 まずは汚れと生臭みを取り除かな…
あん肝は居酒屋さんの定番メニューとしてお馴染みですが、 家庭でも美味しく料理することができます。 その秘訣は下準備にあります。 料理する前にしっかり処理することがコツです。 魚屋さんで売られているあん肝はすでに血抜きされています。 乳白色のつや…
江戸時代に「三鳥二魚」と呼ばれる五大珍味がありました。 三鳥とはツルとバンとヒバリ、二魚とはタイとアンコウです。 水戸藩から皇室に献上されていたそうです。 また、昔から鍋料理は「東のアンコウ、西のフグ」と言われます。 フグと並び称されるほどで…
アンコウはほとんど捨てるところがない魚です。 頭と背骨以外は全て食べられます。 頭と背骨でさえ出汁を取るのに使われます。 解体した部位は、「アンコウの七つ道具」と呼ばれています。 その七つとは、ヤナギ、カワ、水袋、キモ、ヌノ、エラ、トモです。 …
加藤楸邨がアンコウを詠んだ有名な俳句があります。 鮟鱇の 骨まで凍てて ぶちきらる 「ぶちきらる」という荒々しい表現が何とも印象的です。 いかにも厳ついアンコウを捌くときの豪快な様子がうかがえます。 アンコウは寒い季節になると旬を迎えます。 冬に…
今昔物語集には、舞茸を食べた人が舞ってしまう奇怪な話が出てきます。 第二十八巻の「尼共山に入り茸を食ひて舞ひし語」がそれです。 今は昔、京に住む木こりたちが北山に出かけて道に迷ってしまいました。 すると、山中から四、五人の尼が舞い踊りながらこ…
きりたんぽ鍋に必ず入る素材といえば、もちろんきりたんぽですが、 他にどんな素材を使うのでしょうか。 比内地鶏、舞茸、芹、ゴボウ、長ネギは必ず入るようです。 他に里芋や糸コンニャクや油揚げが入ることもありますが、 あまり具沢山にしない方がよいと…
きりたんぽ鍋は秋田の郷土料理です。 鶏ガラの出汁と醤油味のしみじみしした鍋料理です。 身も心も温まります。 きりたんぽ鍋に使われる鶏は、秋田の比内地鶏です。 比内鶏ではなく、比内地鶏です。 比内鶏は、古くから秋田県北部で家禽として飼育されてきま…
きりたんぽを漢字で書くと「切短穂」です。 「短穂」とは綿を丸めて布で包んだものを指します。 これを槍の先に取り付けたものが「たんぽ槍」です。 古くから稽古用の槍として用いられてきました。 きりたんぽは、たんぽ槍の形状に似ているので名づけられま…
薩摩汁は鹿児島の郷土料理です。 鶏肉と野菜を煮て味噌仕立てにした料理です。 薩摩芋や薩摩揚げが入った料理ではありません。 鹿児島では昔から闘鶏が盛んに行われていました。 薩摩武士の士風高揚のためといわれています。 闘鶏は、どちらかの鶏が死ぬまで…
「あんたがたどこさ」という手毬歌があります。 地域によって多少歌詞が違いますが、私が知っているのはこんな歌です。 あんたがたどこさ 肥後さ 肥後どこさ 熊本さ 熊本どこさ 船場さ 船場山には たぬきがおってさ それを猟師が 鉄砲で撃ってさ 煮てさ 焼い…