おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

サケの身はなぜ赤いのか

サケの身は鮮やかな赤い色をしています。

いわゆるサーモンピンクです。

 

しかしサケは赤身魚ではありません。

じつは白身魚です。

 

赤身魚の色は、赤い色素タンパク質によるものです。

筋肉の中に酸素を蓄える物質です。

 

常に泳ぎ続ける魚は多量の酸素を必要とします。

マグロやカツオなどの回遊魚がそうです。

 

その筋肉には多くの色素タンパク質が含まれています。

ですから、マグロやカツオの赤身魚に属します。

 

一方、サケの身の赤い色は天然色素によるものです。

ニンジンやトマトに含まれるカルチノイドの一種です。

 

オキアミやエビなどの甲殻類に多く含まれています。

サケはそれらをエサとしています。

 

ですから身が赤くなります。

タイの体の赤い色もこの色素によるものです。

 

サケは産卵のために川を遡上するとエサを食べなくなります。

 

やがて色素は筋肉から卵に移ります。

イクラが赤いのはそのためです。

 

またベニザケのように体の表面が真っ赤に染まる種もあります。

その分だけ身は栄養分を失い、次第に白っぽくなります。

 

必死に川を上って産卵を終えた後、サケは一生を終えます。

その身は真っ白に変わり果てているそうです。

 

まるで燃え尽きてしまった矢吹丈のような生涯です。