おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

世界を救う昆虫食その2 ハチノコ

昆虫は、幼虫と成虫の姿がまったく違う種類が少なくありません。

チョウ類や甲虫類など、完全変態を行う昆虫がそうです。

 

成虫は、広範囲に飛び回って多くの子孫を残す使命がありますから

それに適した体のつくりをしています。

 

一方幼虫は、ひたすら食べて大きく成長するのが役目ですから

それに適した体のつくりをしています。

 

食材の観点からすると、幼虫の方が高い栄養価を持っています。

 

ハチの幼虫やサナギは「ハチノコ」と呼ばれ、古くから食用とされてきました。

長野県や岐阜県などの山間部では伝統的な食材です。

 

ハチの中でも特にクロスズメバチの幼虫が美味とされています。

地域によって「スガレ」「ヘボ」などの別名があるそうです。

 

クロスズメバチは、他のスズメバチの種類ほど攻撃性が高くなく、

毒性も比較的弱いそうです。

 

しかし、安易に巣に近づけばもちろん刺されることもあります。

しかも地中に巣を作るため、どこにあるのか簡単にわかりません。

 

では、どのようにしてクロスズメバチの巣を見つけるのでしょうか。

 

クロスズメバチは獲物の死体から肉団子を作る習性があります。

成虫が食べるためではなく、巣に持ち帰って幼虫に与えるためです。

 

その習性を利用して、肉団子を巣まで持ち帰らせて追跡します。

これを「ハチ追い」といいます。

 

まず魚やカエルの肉を置いてクロスズメバチをおびき寄せます。

エサには真綿をこより状にして絡ませておきます。

 

クロスズメバチに気づかれないのかと心配になりますが、

肉団子を作るのに夢中で、真綿には関心を示さないそうです。

 

クロスズメバチが飛び立ったら、ひたすら後を追いかけます。

エサに絡めた真綿は、行方を見失わないための目印です。

 

巣まで案内してもらったら、火を焚いて煙で巣を燻します。

成虫が仮死状態になったら地中から巣を堀り出します。

 

クロスズメバチの成虫にはたいへん申し訳ないのですが、

巣の中には幼虫やサナギがいっぱい詰まっています。

 

収獲したハチノコは、甘露煮や佃煮にして食べます。

炊き込みご飯にしても美味しいそうです。

 

生きたままハチノコを食べることはあまりないと思いますが、

かつてアニメ「巨人の星」で伴宙太が好んで食べていました。

 

さすが豪傑です。