おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

ブリの語源は何か

ブリの語源については諸説があり、詳しくわかっていません。

 

身が太っているから「ミフトリ」が「ブリ」になったという説や

身がぷりぷりしているから「プリ」が「ブリ」になった説があります。

 

また雪が降る季節に旨いから「降り」が「ブリ」になったという説もあり、

どれも疑わしい感じがします。

 

信頼できる国語辞典によると、脂の多い魚だからという説があります。

「アブラ」から「ブラ」へ、そして「ブリ」へと変わったという説です。

 

これは江戸時代の本草学者、貝原益軒の説によるものと考えられます。

貝原益軒は博学で知られ、「大和本草」という辞典を編集しています。

 

江戸時代の人々の生活様式を知る上でたいへん貴重な資料であり、

食材の語源を調べるために、じつは私も日頃から参考にしています。

 

しかし、拙著「四季の菜摘み」でも指摘しましたが、

ときどき信じられないような学説を唱える学者でもあります。

 

たとえば、ニラの語源は「臭いを嫌う」からだと説明しています。

「臭い」の「ニ」と「嫌う」の「ラ」からニラができたそうです。

 

また、ニンニクは「臭いを憎む」から命名されたと説明しています。

「臭い」の「ニ」と「憎む」の「ニク」からできたそうです。

 

それならば、ニンニクの「ン」は一体どこから出て来たのかと

思わず突っ込みたくなるような稚拙な学説です。

 

「アブラ」から「ブリ」もかなり無理のある説だと思います。

そもそも脂の多い魚は、ブリ以外にもたくさんあります。

 

貝原益軒の主張は、あくまで一つの仮説に過ぎません。

そのまま鵜呑みにすべきではありません。

 

では、なぜブリはブリというのでしょうか。

 

それは「年を経(ふ)る魚」であるからと私は考えています。

すなわち「年を越す魚」、「新年を迎える魚」という意味です。

 

北陸地方を中心に、ブリは正月の料理には欠かせません。

お歳暮としても用いられます。

 

ちょうど東日本における新巻鮭と同じ役割です。

お歳暮や年賀の進物に重用されています。

 

ブリは縁起のいい魚として、年を経る役を担ったのでしょう。

「経(ふ)り」が「ブリ」に転訛した可能性は十分にあります。

 

正月の雑煮やおせち料理として一年に一度食べるのであれば

ブリが一年ぶりの魚であることは間違いありません。