その近江には不老長寿の果実にまつわる伝説が残っています。
あるとき天智天皇は琵琶湖畔の蒲生野に狩りにでかけました。
するとそこでたいへんな長寿の老夫婦に出会いました。
天智天皇は老夫婦に長寿の秘訣をお尋ねになりました。
老夫婦は畏まり、この地で採れる霊果のおかげだと答えました。
そして実際にその不老長寿の果実を天智天皇に献上しました。
天智天皇はそれを一口ご賞味なさり満悦されました。
そのとき「宜(むべ)なるかな」と所感を述べられたそうです。
それは「もっともなことである」という意味です。
それ以来、この果実は「ムベ」と呼ばれるようになりました。
漢字では「郁子」と書きます。
アケビの近種で、実が熟すると赤くなります。
そのため「常盤アケビ」という異名を持ちます。
天智天皇に由来する由緒ある果実です。
ただし生産量はあまり多くありません。
近江八幡市など一部の地域でしか生産されていません。
いわばムベは伝説の果実です。
それでも不老長寿のムベを食べてみたいという要望は多いそうです。
もっともなことです。
当時としても決してご長寿であったわけではありません。