淡水域で生まれたサケは、川を下り海に出て回遊します。
数年かけて成長した後に故郷の川に帰ってきます。
しかし外洋で外敵に食べられてしまうこともあります。
稚魚のうち母川に戻ることができるのは数パーセントに過ぎません。
ところで、なぜサケは生まれ故郷の川を覚えているのでしょうか。
それは、サケの嗅覚と深く関係しています。
サケは母川の水の匂いを記憶しているといわれます。
川の水にはいろいろな物質が溶け込んでいます。
サケはその微妙な匂いの違いを感知できるのです。
しかし、いかにサケが優れた嗅覚と記憶力を持っていたとしても、
数千キロも離れた海から川の匂いを嗅ぎ分けることはできません。
故郷の川の位置と方向を正確に知る手がかりが他にもあるはずです。
それは、太陽と地磁気ではないかと考えられています。
太陽の位置や地球の地磁気によって方位を決定しているようです。
ミツバチや渡り鳥が持つ能力としても知られています。
また、ウミガメなどの大型の海洋生物の回遊と同じように
海流を利用しているとも推察されています。
しかし、まだ科学的に解明されていないことが多くあります。
サケの仲間には、降海せずに一生を淡水域で生息する種類もあります。
イワナやヤマメなどがそうです。
地形の変化などによって海への道が閉ざされてしまったために
淡水域に残るようになりました。
このようなサケの種類を陸封型といいますが、
もともと降海する性質は持っています。
たとえば、サクラマスの陸封型はヤマメです。
ベニザケの陸封型はヒメマスです。
降海型と陸封型は同じ種類の魚なのですが、
降海型の方が数倍も体が大きく成長します。
それだけ海にはエサが豊富にあるということです。
しかし海には外敵も多くいます。
サケにとってどちらが幸せかわかりません。