イタリアにはパンにまつわることわざが多くあります。
たとえば、こんなことわざです。
「歯のある者にはパンがなく、パンのある者には歯がない。」
とかくこの世はままならないという意味です。
「苦労のないパンはない」というのもあります。
人生の真理を示す重厚なことわざです。
イタリア語でパンは「パーネ」、苦労は「ペーナ」といいます。
つまり「ペーナのないパーネはない」ということです。
じつは、語呂合わせの駄洒落にもなっています。
いかにもイタリア人らしいセンスがあります。
「人はパンのみにて生きるにあらず」は有名です。
ことわざというより新約聖書の中の言葉です。
イタリア語に限らず、たいていのヨーロッパ言語には
同様のことわざがあります。
しかし、その後に続く言葉はイタリアにしかありません。
「チーズもワインも、できればデザートも必要である。」
いかにもイタリア人らしいセンスがあります。
「パンとクルミは嫁の食べもの」というのもあります。
何となく「秋ナスは嫁に食わすな」に似ています。
嫁にはパンとクルミだけ与えておけばよい。
チーズもワインも、ましてやデザートも要らない。
そういう意味にも解釈できます。
「小麦粉がなければパンはできない」というのもあります。
無から有は生じないという意味です。
「ないものを得るように努力しよう」というよりは、
「なければないで何とかなる」に近いかもしれません。
楽観的な思考ができるのはイタリア人の特徴です。
いかにもイタリア人らしいセンスがあります。
一方、フランスにはこういうことわざがあります。
「卵を割らなければオムレツはできない。」
似ているようで少し違います。何かを成し遂げるには、
それ相応の行動が必要であるという意味です。
フランス人の前向きな姿勢を表しています。
イタリア人との国民性の違いが感じられます。
もちろんどちらも愛すべき国民性ですが。