ご冥福をお祈りいたします。
じつは三人に共通していることがあります。
三人とも北海道の出身だということです。
昔は北海道出身と青森県出身の力士が多くいました。
その理由は定かではありませんが、北海道や青森県は
地域的に相撲が盛んなことがあるのかもしれません。
しかし、貧しさに負けない強い精神風土があったことが
大きな理由として考えられます。
親方が地方に出向いて有望な人材を見つけたとき
入門を勧誘するときの決め台詞はこうです。
「腹いっぱい飯が食えるぞ。」
昔はその一言で入門を決意する若者がいました。
誰もがお腹を空かせていた時代だったのです。
今は「ハングリー精神」という言葉は聞かなくなりました。
死にもの狂いで頑張らなくても生きていける時代です。
モンゴル出身の力士が相撲界で大活躍しているのも
そうした時代背景があるのかもしれません。
入門した新弟子が最初に任されるのが「ちゃんこ番」です。
相撲部屋の食事の支度をする役目のことです。
稽古に支障がないように当番制になっていますが、
幕内に昇進しない限り、ちゃんこ番は続きます。
実家が漁師ですから、魚をさばくのは上手だったそうです。
その手つきが、獲物を捕らえる狼のように見えたので、
ウルフというあだ名がついたと伝えられています。
もちろん相撲の取り口も、まるで狼のように鋭く速く力強く、
自分より体の大きい相手をものともしませんでした。
まさにハングリー精神のかたまりのような力士でした。
体が小さくても戦えることを証明してみせました。
ところで、ちゃんこ鍋には厳格な決まりがあります。
番付が上位の力士から順に食べるということです。
上位の力士が食べ終わるまで、下位の力士は給仕しながら
じっと待っていなければなりません。
ようやく順番が回ってくる頃には、ほとんど食べ尽くされて
ちゃんこ鍋の底に汁しか残っていません。
ちょっとかわいそうな気もしますが、じつは合理的なやり方です。
早く食べたければ強くなればよいのです。
単純明快な考え方ですが、力士のハングリー精神を育むことも
ちゃんこ鍋の目的の一つなのです。
ちなみに、相撲界には古くからの言い伝えがあります。
「ちゃんこ鍋を上手に作る力士は出世しない」と。
逆にいうと、出世しないからこそ長くちゃんこ番を務め、
その結果、作り方が上手になるとも考えられます。
相撲の世界は何とも合理的です。