おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

秋ナスはなぜ嫁に食わせないのか

「秋ナスは嫁に食わすな」という表現があります。

昔からよく物議を醸してきました。

 

嫁いびりの言葉なのか、それとも嫁を思い遣る言葉なのか、

解釈が分かれているからです。

 

似ている表現に「秋サバは嫁に食わすな」があります。

やはり解釈が分かれるところです。

 

昭和時代のテレビドラマならば、明らかに前者でしょう。

嫁と姑の確執は、視聴者の共感を得やすいテーマです。

 

秋ナスも秋サバもたいへん美味しい旬の食材ですから、

意地悪なお姑さんの気持ちもわからなくありません。

 

しかし、美味しくて食べ過ぎるとお腹を壊してしまいます。

とくに秋ナスは体を冷やすといいます。

 

そこで心優しいお姑さんがお嫁さんの体を気遣い、

食べさせないように配慮したとも考えられます。

 

じつは「嫁」は、「ネズミ」のことを指すという説があります。

 

ネズミは夜に活動する動物なので「夜目」と呼ばれ、

それが間違って「嫁」になってしまったという説です。

 

昔の人にとってネズミはたいへん厄介な害獣です。

畑を荒らし、大切な農作物を食べてしまいます。

 

ネズミという言葉を使うと不吉なことを連想します。

縁起が悪いので、ネズミを「夜目」に言い換えました。

 

いわゆる忌詞(いみことば)の一つです。

「スルメ」を「アタリメ」というのと同じです。

 

「秋ナスを嫁に食わすな」の本当の意味は、

「美味しいものをネズミに食われるな」です。

 

そんなテレビドラマはないだろうと思ったら、

アメリカのテレビアニメにありました。

 

トムとジェリー」です。