おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

ニョッキはなぜ木曜日に食べるのか

ニョッキは、ジャガイモと小麦粉を練った団子状のパスタです。

茹でたジャガイモをつぶして小麦粉を混ぜて練り合わせます。

 

小さく丸めるときに中心をくぼませた貝殻状にします。

その方がソースによくからむからです。

 

形が不均一なのはご愛敬です。

 

イタリアにはこういうことわざがあります。

「誰でも自分の練り粉でニョッキを作れる。」

 

下手は下手なりに自分のやり方があるという意味です。

 

ニョッキは定番のクリームソースやトマトソースの他にも

ジェノベーゼソースやゴルゴンゾーラソースが合います。

 

イタリアで愛されている家庭料理の一つです。

 

イタリアでは、木曜日にはニョッキを食べるといわれています。

それは一体なぜでしょうか。

 

かつては曜日ごとに決まった料理を食べる伝統がありました。

現代でもその習慣が残っている地域があります。

 

じつは、木曜日のニョッキの後にも続きがあります。

金曜日には魚、土曜日にはトリッパと定まっています。

 

金曜日はキリストの受難の日とされています。

そのため鳥獣の肉は食べません。

 

質素な魚料理を食べる習慣があるのですが、

魚ならば何でもよいわけではありません。

 

主に、塩漬けにして干したタラを食べます。

イタリア語でバッカラと呼ばれています。

 

宗教的な意味を持つ料理ですからご馳走ではありません。

むしろ、どちらかというと粗食です。

 

金曜日の粗食に備えて、木曜日にはニョッキを食べます。

美味しいニョッキをたくさん食べて金曜日を迎えます。

 

ニョッキは滋養があり、腹持ちのよい料理です。

何とか土曜日まで耐えることができます。

 

その代わり、土曜日にはご馳走を食べます。

イタリア人の大好物のトリッパです。

 

トリッパとは、ウシの二番目の胃袋のことです。

その形状から日本語でハチノスと呼ばれます。

 

日本では、焼き肉やモツ鍋などに使われますが、

イタリアでトリッパといえば、煮込み料理です。

 

ローマ風トリッパはトマトソースで煮込みます。

ミラノ風トリッパは赤ワインで煮込みます。

 

もしかしたら土曜日に美味しいトリッパを食べるために

金曜日の粗食の習慣を堅持しているのかもしれません。

 

ところで、木金土以外には何を食べているのでしょうか。

 

日曜日はラザニア、月曜日はミネストローネ、

火曜日はミートボールスープが多いそうです。

 

水曜日は、残りものを食べてニョッキを楽しみに待ちます。

イタリア人は本当にトリッパとニョッキが好きなようです。