おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

桜海老はなぜ桜色なのか

桜海老漁が解禁になりました。

 

桜の季節は、桜海老の季節でもあります。

桜の花が咲く頃に、桜海老は旬を迎えます。

 

桜海老は主に静岡県駿河湾で獲れます。

清水市の由比漁港の名産です。

 

釜揚げした桜海老や、天日に干した桜海老ばかりでなく、

生の桜海老をそのまま冷凍したものも流通しています。

 

ワサビ醤油で食べたり、大根おろしを添えて食べたり、

お浸しに和えても美味しいです。

 

ホウレンソウやコマツナなどのお浸しに桜海老を散らすと

緑色の青菜に桜色がじつに鮮やかに映えます。

 

加熱すると甘みが増すので、かき揚げもお薦めです。

三つ葉と一緒に揚げると、これも見事な色合いです。

 

漁師の間では「沖あがり」という料理が知られています。

豆腐や長ネギと一緒に桜海老を煮た料理です。

 

ご飯にたっぷりの桜海老を乗せていただく「桜海老丼」は、

この季節ならではの贅沢な味わい方です。

 

ところで、桜海老はなぜ桜色なのでしょうか。

 

桜海老は透き通るようなきれいな体をしていますが、

よく見ると赤い色素が点在しています。

 

この赤い色素は「アスタキサンチン」によるものです。

天然色素カロテノイドの一種です。

 

海老や蟹やオキアミなどの甲殻類に含まれています。

そのため桜海老は桜色に見えるのです。

 

また、鯛の体が桜色をしているのもこの色素のためです。

海老やオキアミをエサとしているからです。

 

ところで「海老で鯛を釣る」ということわざがあります。

「わずかな元手で多くの利益を上げる」という意味です。

 

人間だけでなく、鯛も海老が大好物なのです。

釣られてしまう鯛の気持ちがよくわかります。

 

しかし、桜海老はたいへん希少な水産資源です。

ここ数年は記録的な不漁が続いています。

 

もともと海の赤い宝石とも呼ばれていますが、

今では鯛よりも高価になっています。

 

「海老で鯛を釣る」の意味も変わるかもしれません。

「高額な投資をして利益を上げること」に。