おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

ホタルイカはなぜ光るのか

春はホタルイカの季節です。

刺身でも茹で上げても美味しい食材です。

 

富山県ホタルイカが、たいへんよく知られていますが、

じつは、兵庫県日本海側で多く水揚げされています。

 

傷みやすいので、昔は地元でのみ消費されていましたが、

流通技術の向上によって、全国にも広まりました。

 

ホタルイカは全身が青白く光る神秘的な生きものです。

夜の海を青く映し出す光景は、まさに幻想的です。

 

春の富山湾で見られるホタルイカの美しい群雄海面は、

国の天然記念物に指定されています。

 

ところで、ホタルイカはなぜ光るのでしょうか。

 

ホタルイカが光るのは、全身に発光器を持っているからです。

発光器には「ルシフェリン」という発光物質が含まれています。

 

発光物質が発光酵素の「ルシフェラーゼ」の作用によって光ります。

昆虫のホタルが光るのと同じ仕組みです。

 

ルシフェリンは、イカやクラゲやエビやオキアミにも見られます。

ウミホタルも持っています。

 

ノーベル化学賞を受賞した下村脩博士は、ウミホタルを研究して

ルシフェリンの結晶化に成功しました。

 

しかし、光る理由については今でも謎に包まれています。

 

腕の発光器が刺激を受けると、発光することはわかっています。

敵に襲われたときに、相手を驚かすためとも考えられます。

 

あるいは、集団におけるコミュニケーションという説もあります。

詳しい理由はわかっていません。

 

ホタルイカが光るところを見たいという要望は全国的に多く、

生きた状態を保って空輸されることもあります。

 

バブル時代はおしゃれなレストランでも提供されました。

ワイングラスに泳がせて青白い光を楽しむ趣向です。

 

ライトダウンされた店内で幻想的に光るホタルイカは、

うっとりするほど美しかったことでしょう。

 

しかし、今ではもうバブルは消えてなくなりました。

まるでホタルイカの光が消えるように。