おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

味噌作りの楽しさ

昔は各家庭で味噌を作っていました。

いわゆる自家製味噌です。

 

それぞれの家庭に自慢の味噌がありました。

「手前味噌」という表現があるほどです。

 

味噌作りは二日がかりの大仕事です。

家族総出で手伝います。

 

「寒仕込み」という言葉がありますが、

一年にうちで最も寒い季節に仕込みます。

 

暖かくなるにつれて、味噌の発酵と熟成が進みます。

そして秋が深まる頃、美味しい味噌が仕上がります。

 

寒い季節に仕込むのは、もう一つ理由があります。

 

春になると農作業が始まるからです。

味噌を作るには忙しすぎるのです。

 

しかし、春仕込みの味噌というのもあります。

寒仕込みよりも早く発酵が進みます。

 

ただ、香りと風味は寒仕込みが勝ります。

 

私の実家でも親戚が集まって味噌作りをしていました。

子どもの頃、とても楽しかったことを覚えています。

 

前日のうちに大量の大豆を洗って水に浸しておきます。

水を吸って膨らんだ大豆を大きな鍋で煮ます。

 

煮豆を作るのと違って、かなり長時間煮込みます。

指で摘まむと簡単に潰れるほど軟らかくします。

 

煮上がった大豆を機械で磨り潰します。

大豆をミンチにする専用の機械です。

 

子どもの頃、何と呼んでいたか覚えていませんが、

ミンサーというのが正式な名前だそうです。

 

挽き肉を作る機械と原理は同じです。

大豆を入れて大きなハンドルを回します。

 

挽き肉のように潰れた大豆が出てきます。

面白くて、いつまで見ていても飽きません。

 

塩と麹はあらかじめよく混ぜておきます。

これを「塩切り麹」といいます。

 

潰した大豆と塩切り麹を練り合わせます。

耳たぶの柔らかさが基本です。

 

練り上げたら、味噌樽に均等に詰めていきます。

空気が入らないようにしっかり押し固めます。

 

さらに和紙を敷いて空気に触れないようにします。

カビが生えないようにする工夫です。

 

味噌桶に木の蓋を被せて石の重りを乗せます。

そのまま十か月ほど寝かせておきます。

 

香り豊かな味噌の完成です。