柴漬けはナスやキュウリに赤シソの葉を加えて塩漬けにしたものです。
京都大原の伝統的な漬け物として知られています。
昔は「柴」ではなく「紫葉」と書いたそうです。
赤シソの葉のことを意味する言葉です。
いつ頃から作られるようになったのか詳しく分かっていませんが、
伝説によると建礼門院が大原で召し上がったとされているので、
少なくとも平安時代後期には食べられていたようです。
栄華を極め華やかな宮廷生活を送りましたが、
やがて運尽きて源氏に追われる身となりました。
助けられて京に連れ戻されます。
悲しみに暮れて大原の寂光院に隠棲することになりました。
平氏一門の菩提を弔いながら静かな生涯を終えました。
その建礼門院に献上されたのが大原の柴漬けでした。
おそらく里の者が丹精込めて作ったのではないでしょうか。
史実かどうかは別として心を癒す味だったと思います。
最愛の子を亡くした建礼門院の心の苦しみは
平家物語を始めとして多くの文献に描かれています。
柴漬けを食べてその苦しみがなくなるわけではありませんが、
一時の心の平穏を得たであろうことを願わずにはいられません。
大原の本場の柴漬けはナスと赤シソと塩だけで作るそうです。
日本の漬け物では珍しい乳酸発酵の食品です。
ですから出来上がるまでに数か月から一年もかかります。
本場には敵いませんが私は夏になるとよく即席の柴漬けを作ります。
ナス、キュウリ、ミョウガ、ショウガを切って塩揉みします。
梅酢で和えて青シソを刻んで混ぜます。
赤シソではなく青シソを使うのがポイントです。
赤シソはアクが強いので即席の柴漬けには向きません。
また最近のナスはアクが少ないのですが、
それでも切ってからしばらく水に晒した方がよいでしょう。
即席の柴漬けは色彩もよくさっぱりした風味で食欲が湧きます。
夏バテ予防には最適の一品です。
ぜひ試してみてください。