
イタリア料理に欠かせない食材といえば、
オリーヴオイルとトマトです。
日本料理に味噌と醤油が欠かせないのと
同じくらい重用されています。
オリーヴオイルは紀元前から使われていますが、
トマトは比較的歴史が浅い食材です。
アメリカ大陸からヨーロッパに伝わった当初は、
トマトには毒があると考えられていました。
そのため、百年以上もの間ずっと食用ではなく、
観賞用として栽培されてきました。
イタリアで最初にトマトを食べたのは、貧しい庭師で
あったと伝えられています。
貴族の庭園の手入れをしているときに、トマトの実が
たわわに生っているのを見つけました。
空腹のあまり、飢えて死ぬのも毒で死ぬのも同じだと
覚悟して食べてみました。
ところがトマトに毒はなく、むしろたいへん美味しい
実であることがわかりました。
それ以来、品種改良が重ねられて、イタリア料理に
なくてはならない食材になりました。
現在イタリア料理がトマトの恩恵を受けているのは、
貧しい庭師のおかげかもしれません。
ところで、イタリア語ではトマトのことをトマトと
呼びません。「ポモドーロ」といいます。
「ポーモ・ディ・オーロ」を縮めた言葉です。
「ポーモ」はリンゴ、「オーロ」は黄金です。
つまり「黄金のリンゴ」という意味です。
じつは初期のトマトは赤くなかったのです。
おそらく、黄色の実かオレンジ色の実だったと
考えられています。
赤い色素の「リコピン」よりも、黄色い色素の
「カロチン」が多かったのではないしょうか。
現在では、黄色や緑色や黒いトマトがありますが、
やはりトマトといえば赤い色が主流です。
中でもイタリア人の心をつかんで離さないのは、
「サンマルツァーノ」という品種です。
細長く、やや先が尖った楕円形が特徴です。
なかなか愛嬌のある形をしています。
肉厚で種が少なく、甘みと酸味のバランスが取れた
イタリア人好みのトマトです。
濃厚な旨みは加熱することによって一層際立ちます。
そのためトマトソースに最適です。
サンマルツァーノで作られたトマトソースは、
パスタにもピッツァにも使われます。
もしかしたらトマトがイタリアで愛されている秘密は、
サンマルツァーノにあるではないでしょうか。