イカもタコも海に生息する軟体動物です。
食材として古くから親しまれています。
昔はタコが「デビルフィッシュ」として嫌われ、
ヨーロッパの人々は食べないといわれました。
しかし、それは事実ではありません。
地中海沿岸では一般的な食材です。
イカとタコは料理法が似たところがありますが、
もちろん違うところもあります。
たとえば、イカ墨パスタはありますが、
タコ墨パスタはありません。
外敵に襲われたときに墨を吐いて逃げるのは、
イカもタコも同じです。
しかも墨の成分はほぼ同じだそうです。
ではなぜタコ墨パスタはないのでしょうか。
それはタコ墨がイカ墨に比べると粘質性が低く、
サラサラしているからです。
タコ墨は煙幕のように拡散して敵の目をくらまします。
その隙にタコは海底にこっそり隠れます。
一方、イカ墨は固まりの状態で吐き出されます。
その固まりはイカの姿に似ているそうです。
いわば敵の目をあざむく分身の術です。
敵が戸惑う間にイカは一目散に逃げます。
イカはタコと違って泳ぐのが得意ですから、
こっそり隠れる必要がないのです。
イカ墨は粘り気があって料理によくからむので
パスタソースに向いています。
タコ墨もイカ墨に劣らず美味しいそうですが、
残念ながら料理には向いていません。
イカ墨と比べて一匹から取れる分量も少なく、
しかもタコの体の内部に墨袋があります。
その点、イカ墨の墨袋はゴロワタの外側にあって
簡単に取り外すことができます。
イカ墨パスタを作るときは、まずニンニクと唐辛子を
オリーヴオイルで炒めます。
香りが立ったところに、トマトを入れます。
イカと白ワインを加えて軽く煮込みます。
茹で上げたパスタをからめてパセリを散らします。
真っ黒い色のイカ墨パスタは衝撃的に見えますが、
イカ墨の旨みが感じられる一品です。
ところで、イタリアは地中海に囲まれているので、
イカは各地で獲れます。
その理由はヴェネツィアに残る言い伝えです。
古くからヴェネツィアで信じられていたからです。