イカもタコも海に生息する軟体動物です。
食材として古くから親しまれています。
イカとタコは料理法が似たところがありますが、
もちろん違うところもあります。
たとえば「たこ焼き」はありますが、
「いか焼き」はありません。
もちろんイカを焼いた料理は昔からたくさんありますが、
それは「焼きいか」であって「いか焼き」ではありません。
たこ焼きのような丸い形状の粉もの料理で、
イカを使ったものは知られていません。
粉もの料理にもソース味にもよく合います。
たこ焼きのタコの代わりにイカが使われても
全くおかしくありません。
それにもかかわらず「いか焼き」は知られていません。
その理由はたこ焼きの歴史と関係があるかもしれません。
たこ焼きは昭和時代の初期に大阪で生まれました。
当初は「ラヂオ焼き」と呼ばれていました。
ちょうど日本でラジオ放送が始まった時代ですから、
その人気にあやかった命名です。
初めはタコではなく、醤油で煮込んだ牛スジ肉を
入れて焼いていました。
しかし明石のタコを使った「明石焼き」の影響を受けて、
やがてタコを使うようになりました。
たこ焼きの人気が大阪で爆発的に高まったのは、
ソースが登場してからです。
イギリスから伝わったウスターソースを改良して、
日本独自の甘辛いソースが作られました。
たこ焼きやお好み焼きや焼きそばによく合うので、
鉄板ソース食文化圏が形成されていきます。
たこ焼きという粉もの料理がいったん確立すると、
タコの代わりにイカを使う発想は影を潜めます。
イカを使っても美味しいことはわかっていても、
たこ焼きはあくまでタコを味わう粉もの料理です。
まして、たこ焼きは愛嬌のある丸い形をしています。
タコを連想してもイカは連想できません。
一方、お好み焼きは文字通りお好みですから、
イカも柔軟に受け入れられました。
イカだけでなく、エビやカキなども好まれます。
面白いことに、タコを入れることもあります。
それではたこ焼きと同じになるじゃないかと
思われるかもしれませんが、違います。
たこ焼きのタコは主役ですが、
お好み焼きのタコは脇役です。
脇役というより、役者の一人と言うべきかもしれません。
他の役者と協力して美味しさを作り上げていきます。
そういう意味では、お好み焼きの具材はすべて主役です。
誰を主役にするかは、お好み次第です。