おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

日本原産なのに知られていない果実その1

あまり知られていない日本原産の果実といえばアケビです。

 

アケビは柿と同じように日本を含む東アジアの原産です。

柿は英語でも「カキ」ですが、アケビも英語で「アケビ」といいます。

 

おそらく柿を知らない日本人はほとんどいないと思いますが、

アケビを知る日本人は決して多くはありません。

 

古くから日本各地の山に自生していますが、

その地域に住む人しか食べる機会がありませんでした。

 

私も子どもの頃に野生のアケビを食べた経験があります。

柿と同様に秋に実る果物です。

 

不思議なことに柿を取るときは大人の許可が要りますが、

アケビはいくら取っても叱られることはありませんでした。

 

柿と違って当時はアケビの商品価値がなかったのだと思います。

 

果物として栽培されるようになったのは近年のことです。

市場に出荷されるアケビのほとんどは山形県産です。

 

アケビの実は円筒状で鮮やかな紫色をしています。

熟すると果皮が割れて中から白い果実が出てきます。

 

アケビという名前は「開け実」に由来するそうです。

果皮が開いたときがちょうど食べ頃です。

 

実の形や甘味はバナナを連想させるところがあります。

しかしバナナと違って小さな種がぎっしり詰まっています。

 

一口噛んでは種を吐きながら食べます。

なかなか食べ難い果実です。

 

そのために柿ほど普及しなかったのではないかと考えられます。

たとえ美味しくても食べ難い果実は価値が低くなります。

 

もし品種改良されて種無しアケビが栽培されるようになれば

柿に負けない人気を博すことは間違いありません。

 

もっともそうなったら紫色のバナナと変わりません。

アケビらしさがなくなってしまって残念です。