「100年先に伝えたい日本の美味しいお漬物は、次の9品の漬物料理を紹介しています。
「沢庵漬け」
「ぬか漬け」
「柴漬け」
「福神漬け」
「野沢菜漬け」
「高菜漬け」
「奈良漬け」
「らっきょう漬け」
「いぶりがっこ」
古来、日本には多種多様な漬物があります。四季がはっきりしているので、季節ごとに旬の野菜を漬けることができます。また、塩、醤油、味噌、甘酢、糠、麹、酒粕などを用いたさまざまな漬け方があり、野菜との組み合わせを考えると、ほぼ無限の漬物を楽しむことができます。しかし、無限にある漬物に共通していることは、白米のご飯によく合うということです。米を主食とする日本の食卓に漬物は欠かせません。日本人ほど漬物好きの国民はいません。
採れたての新鮮な野菜はサラダでも美味しく食べられますが、サラダは作り置きができません。ドレッシングと和えたらすぐに食べないと、野菜から水分が出てベタベタになってしまいます。それに比べると漬物は、漬ける過程で適度に水分が抜けるのでシャキシャキ感が損なわれることはありません。漬け方によっては、数か月も数年も保存が利くものもあります。
もともと日本では、漬物以外の方法で生野菜を食べる習慣がほとんどありませんでした。虫がついていたり細菌がついていたりする危険性があり、食中毒を引き起こす恐れがあるからです。それを防ぐために、通常は野菜を加熱調理して食べていました。しかし、熱によって野菜に含まれるビタミンなどが失われてしまいます。その点、漬物は火を通さないのでビタミンが失われることがありません。むしろ、糠漬けのようにビタミンが添加されて栄養価が高まることがあります。漬物はたいへん健康的な料理なのです。
ただし、漬物は保存食としての役割もありますから、塩分濃度が高いのが特徴です。美味しいからといって、食べ過ぎには注意しなければなりません。近年は、家で漬物を手作りする人は少なくなり、店で作られた漬物を買う人が増えてきましたが、健康ブームの風潮を反映して「減塩漬物」が多く扱われるようになってきました。その代表的な例が梅干しです。
梅干しが何年も何十年も長期的に常温で保存できるのは、高い塩分のおかげです。昔は青梅の重さの二割以上の塩を使って漬け込んでいました。かなり塩辛く酸っぱい味の梅干しでした。ところが、今は「減塩梅干し」が主流となり、塩分が低くなったために昔よりも保存性と風味が低下しています。本来、梅干しは青梅と塩だけで作る自然食品ですが、現在では保存料と調味料を添加して製造されることがあります。
白菜漬けも、あっさりした減塩の漬け方が増えてきました。昔は冬になると野菜が不足するので、秋に収穫した白菜を大きな樽に大量に漬け込んでいました。もちろん一冬保存できるように塩分を濃くして作ります。しかし今では冬の間もずっと新鮮な白菜が流通しているので、食べる分だけ少量に浅漬けを作ることができます。大量に漬けて寝かせた白菜漬けは味わい深く美味しいのですが、浅漬けの白菜漬けもまたあっさりしていて美味しいものです。好みに合わせて自在に漬け方を変えることができるのは、漬物の大きな魅力です。