
昔から「食べ合わせ」と呼ばれる禁忌が知られています。
一緒に食べてはいけない食品の組み合わせのことです。
科学的な根拠があるわけではなく、あくまで俗説ですが、
それなりに理に適っている場合もあります。
たとえば、代表的な食べ合わせとして有名なのが、
ウナギと梅干しの組み合わせです。
一緒に食べていけない理由はいくつか考えられますが、
梅干しに食欲増進の効果があることもその一つです。
ウナギは昔も今も高級食材ですから、どちらかというと
じっくり味わって食べるものです。
ところが、梅干しの食欲増進の効果がはたらくと、
ついたくさん食べ過ぎてしまいます。
お腹は満たされますが、お財布は空っぽになります。
それを戒める目的があったのかもしれません。
逆に、ウナギをじっくり味わうために一度に食べ切らず、
残しておくこともあったのではないでしょうか。
冷蔵庫のない時代は、長く保存できないので、
腐敗防止に梅干しを添えたと考えられます。
しかし、もしウナギが傷んでいても梅干しの酸味で
それに気づかないことがあります。
そのために、一緒に食べてはいけないという禁忌が
生まれたのかもしれません。
ところで、昔から「夏に長魚」と言われるように、
ハモもウナギと同様に夏に好まれる食材です。
夏のハモは、さっと湯引きした梅肉和えが最高です。
さっぱりとしたハモの旨みが味わえます。
透き通るような純白のハモに真っ赤な梅が印象的です。
いかにも夏らしく爽やかで涼し気な一品です。
ハモは京料理の定番ですが、京都ではハモは獲れません。
主に大阪湾で水揚げされたハモが京都に運ばれます。
ハモはたいへん生命力の強い生きものです。
京都に運ばれてもまだ生きています。
ただし、生け簀に入れると共食いしてしまうので、
一匹ずつ木桶に入れておきます。
大振りのハモは木桶に納まり切らないほど大きく、
ひらがなの「つ」の字になります。
「つ」の字のハモは身が肥えていて生きのよい証拠です。
目利きの料理人に選ばれるハモです。
京都のハモ料理が美味しい理由の一つは、
「つ」の字のハモが使われることです。
もちろん京都の料理人の腕前も理由として挙げられます。
舌の肥えた京都の食通をうならせるほどの腕前です。
あまり聞いたことがありません。
ウナギはハモより脂が多く、こってりしているからです。
さっぱりした梅よりはピリリとした山椒の風味が合います。
白焼きにしたウナギに梅肉やワサビを添える料理もありますが、
やはりウナギは甘辛い醬油ダレで蒲焼きにするのが最適です。
熱々の鰻丼や鰻重に山椒を添えるのが美味しい食べ方です。
腕の立つ京都の料理人がそれを知らないはずはありません。
ウナギと梅干しを一緒に食べてはいけないという禁忌は、
もしかしたら京都の料理人が始めたのかもしれません。
ハモと梅干しの組み合わせが洗練されているだけに、
ウナギと梅干しはどうしても野暮に感じられます。
もし権威ある京都の料理人が言い始めたとすれば、
全国に広まっていくのも当然だと思います。