
「土用干し」という季節の風習があります。
夏の土用の時期に衣服を干すことです。
夏の土用は立秋の前の18日間をいいます。
例年7月下旬から8月上旬の期間です。
晴天が続く時期ですから、虫干しには最適です。
衣服についた虫を駆除するために行われます。
昔から土用干しは夏の風物詩とされてきましたが、
土用は梅干しを作る時期でもあります。
梅雨の季節に漬けておいた梅を天日に干します。
大きな竹ザルに梅を並べて三日三晩干し続けます。
梅は真夏の照りつける陽を浴びて適度に水分が抜け、
夜風にさらされてしっとりと柔らかくなります。
田舎ではどこの家でもよく縁側に梅を干していました。
それも懐かしい夏の風物詩です。
ところで、梅は夏バテ予防に適した食品です。
発汗で失われた塩分を補給できるからです。
また、梅干しの酸味はクエン酸によるものですが、
多様なビタミンやミネラルも含まれているので、
梅干しはたいへん健康的な食品です。
ただし、塩分が高いので注意する必要があります。
摂り過ぎは高血圧の原因になります。
食塩の主成分である塩化ナトリウムは、塩素イオンと
ナトリウムイオンに分離して水中に存在しています。
体内に吸収された塩分もイオンに分離しているので、
塩は栄養素としてはナトリウムに分類されます。
ナトリウムは人間の体に必須の栄養素ですが、
現代人は摂取過多の傾向にあります。
ナトリウムを少なめに、カリウムを多めに摂るのが
理想的な食事とされています。
カリウムは野菜や果実に多く含まれていますが、
牛乳にも多く含まれています。
その理由は、牛が草食動物だからです。
牧草にもカリウムが含まれているのです。
そのため牛のような大型の草食動物は、現代人とは逆に
ナトリウムが不足しがちです。
牛を飼っている農家では牛に適量の塩を与えて、
ナトリウムとカリウムのバランスを取っています。
牛は塩をなめるのが大好きですが、それは牛にとって
大切なナトリウムの補給なのです。
ところで、料亭などの飲食店では商売繁盛を願って、
店先に「盛り塩」を行う習慣が昔からありました。
塩で店先を清めるという意味もありますが、
もう一つ重要な目的がありました。
それは、貴人に店に立ち寄ってもらうという目的です。
なぜ塩にそのような効果があるのでしょうか。
平安時代までは、身分の高い貴人が外出するときは、
牛が牽く「牛車」という乗り物に乗っていました。
しかし、牛が料亭の店先の盛り塩を見つけると、
足を止めて大好きな塩をなめ始めます。
いかに貴人といえども、牛が足を止めてしまっては、
待つより他にありません。
仕方なく、貴人はその料亭で一休みすることになります。
盛り塩のおかげで、料亭は貴人を招くことができるのです。
その名残が今も続き、牛車のない現代になっても、
料亭では盛り塩を行う習慣が残っています。