日本人が一般的に牛肉を食べるようになったのは、
明治時代になってからのことです。
牛肉を食べることを奨励したのは、福沢諭吉です。
日本の食習慣を西洋化しようと試みました。
獣肉食を忌避するのは日本人の古い迷信であり、
欧米人は普通に食べていると紹介しました。
また牛肉は滋養に富んだ優れた食材であり、
日本人の健康増進に役立つとも主張しました。
おかげで牛肉は日本の食文化に普及し、
日本独自の牛肉料理が生まれました。
すきやき、しゃぶしゃぶ、肉じゃがなどは
その代表的な料理です。
現在では、ハンバーグやビーフステーキや
焼肉などが人気のメニューです。
牛肉はなくてはならない食材です。
しかし今、世界では牛肉を食べることを見直そうと
する動きが盛んになっています。
それには、さまざまな理由があります。
健康志向の高まりもその一つです。
牛肉は高カロリー、高コレステロールですから、
摂り過ぎには注意しなければなりません。
宗教上の理由や、動物愛護の考え方もあります。
ベジタリアンやビーガンという人々もいます。
環境への配慮から牛肉を差し控える人もいます。
牛肉を食べることは環境に悪いのでしょうか。
じつは牛の飼育は環境に大きな負荷がかかります。
何よりも膨大な量の飼料が必要です。
牛肉1キログラムを生産するためには、
10キログラムの飼料が要るといわれています。
その多くはトウモロコシなどの穀物です。
それが世界の食糧不足の原因にもなっています。
もし世界の人々が牛肉を食べることを止めれば
10倍の穀物を分かち合うことができます。
もちろん単純計算ではありますが、
世界の飢餓を救うことに寄与します。
また、牛から排出される大量のメタンガスも問題です。
牛の飼育頭数が増えると、地球温暖化に
ますます脅威を与えることになります。
さらに、森林破壊が深刻です。
牛肉の輸出量が最も多い国はブラジルです。
アメリカやオーストラリアの約2倍です。
牧草地を確保するために森林が伐採されています。
アマゾンが激減している理由の一つになっています。
今後さらに世界の牛肉の需要が増えることによって
森林の消失は加速します。
では、私たちは牛肉を食べてはいけないのでしょうか。
決してそのようなことはありません。
極端な罪悪感を持つ必要もありません。
しかし、食材の由来を正しく理解して
食の問題を認識することは大切です。
環境に配慮した食生活は今や常識になりつつあります。
持続可能な食材の確保が重要な課題となっています。
牛肉についてもっと議論してもよいのではないでしょうか。
きっと福沢諭吉先生もそう望んでいると思います。