「100年先に伝えたい日本が愛する牛肉料理」は、次の15品を紹介しています。
「しゃぶしゃぶ」
「肉じゃが」
「ハンバーグ」
「すき焼き」
「ミートソース」
「ハンバーガー」
「牛レバ刺し」
「カルパッチョ」
「ローストビーフ」
「牛鍋」
「タルタルステーキ」
「ボロネーゼ」
「ビーフストロガノフ」
「焼肉」
アメリカのプロバスケットボール界で数々の伝説を残したコービー・ブライアント選手の名前が、神戸牛に由来するという話はよく知られています。Kobeとつづってコービーと発音します。彼の父が神戸牛のステーキを食べたときに、あまりの美味しさに感動して名づけたと伝えられています。
神戸牛とは、兵庫県で生産された但馬牛のうち、一定の基準を満たす牛肉をいいます。幕末に神戸にやって来たヨーロッパ人がその味を絶賛したことから知られるようになり、日本が開国してからは、横浜に居住する外国人ためにわざわざ神戸港から横浜校に輸送していました。明治時代になって初代兵庫県知事に就任した伊藤博文公も、但馬牛や三田牛を好んで食べていたそうです。伊藤博文公はイギリス留学の経験があるので、牛肉料理の美味しさをよく知っていたのかもしれません。
ところで、江戸時代まで日本人は獣肉食を忌避していたはずですが、なぜ開国前の神戸に牛肉があったのでしょうか。それは、もともと但馬牛が食用として飼われていたわけではなく、役牛として飼われていたからです。田畑を耕したり、荷物を運んだりする労役用の牛のことです。但馬牛は体が小型の割には力が強く、従順で働き者の役牛です。すでに平安時代には但馬で盛んに生産されていたそうですから、おそらく平安貴族が乗った牛車も牽いていたのではないでしょうか。
但馬牛の中でもとくに名牛と謳われているのがが、昭和時代に生きた「田尻号」という牝牛です。なぜ名牛かというと、現在のほぼ全ての黒毛和種たちのお母さんだからです。牛肉の肉質は、飼育環境だけでなく血統によって決まります。そのため交配によって品種改良を行いますが、その記録は何世代にもわたって残され、簡単に祖先をたどることができます。それによると、日本で飼育されている黒毛和種の99.9パーセントが、田尻号の子孫であることがわかっています。松坂牛、近江牛をはじめ、多くのブランド牛を生み出した名牛なのです。
和牛の種類は、黒毛和種の他にも褐毛和種、日本短角種、無角和種がありますが、黒毛和種以外の和牛は、全体のわずか数パーセントに過ぎません。和牛といえば、そのほとんどは黒毛和種です。その理由は、黒毛和種が日本人好みの「霜降り肉」になりやすいからです。筋肉の間に「サシ」と呼ばれる網の目状の脂肪が細かく入った肉のことです。肉質が柔らかく、加熱すると脂肪の甘みを感じることができます。すき焼きやしゃぶしゃぶなどの日本料理に向いています。
もちろんビーフステーキやローストビーフのように、西洋風に料理しても和牛は美味しいのですが、じつは和牛は醤油との相性がたいへんよく、白米のご飯にもよく合う食材です。ステーキにジュワっと醤油をかけて焼き上げ、熱々のご飯の上に乗せた「ビーフステーキ丼」や、ホースラディッシュを添えて醤油をつけて食べる「ローストビーフの握り寿司」は、和牛の持つ極上の柔らかさと美味しさを味わうことができます。何よりもお箸でいただけるところが日本人には嬉しい料理です。