黒毛和牛といえば、但馬牛がよく知られています。
正しくは、黒毛和種といいます。
但馬牛の中でもとくに名牛と謳われているのが、
昭和時代に生きた「田尻号」という牝牛です。
なぜ名牛かというと、現在日本で飼育されている
ほぼ全ての黒毛和種たちのお母さんだからです。
牛肉の肉質は、飼育環境よりも血統によって決まります。
そのため交配によって品種改良が行われます。
その記録は何世代にもわたって残されているので、
簡単に祖先をたどることができます。
それによると、現在日本で飼育されている黒毛和種のうち、
99.9パーセントが、田尻号の子孫です。
たった一頭のお母さん牛から、神戸牛や松坂牛や近江牛など、
多くのブランド牛が生み出されたのです。
もちろん和牛の種類は、黒毛和種の他にもあります。
しかし黒毛和種以外の和牛はわずか数パーセントです。
和牛といえば、そのほとんどは黒毛和種です。
黒毛和種が日本人に好まれる最も大きな理由は、
「霜降り肉」になりやすいからです。
筋肉の間に「サシ」と呼ばれる網の目状の脂肪が
細かく入った肉のことです。
肉質が柔らかく加熱すると脂肪の甘みが感じられます。
すき焼きやしゃぶしゃぶなどに適しています。
西洋風に料理しても美味しい牛肉です。
じつは和牛は醤油との相性がたいへんよい食材です。
白米のご飯にもよく合います。
和牛ステーキにジュワっと醤油をかけて焼き上げ、
ご飯に乗せた「ビーフステーキ丼」は最高です。
また、ホースラディッシュを添えて醤油で食べる
「ローストビーフ握り寿司」も和食の逸品です。
和牛の極上の柔らかさと美味しさが味わえます。
何よりお箸でいただけるのが魅力です。
これもたった一頭のお母さん牛のおかげです。