おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしいことばを探してみましょう。

動物のフンから生まれる極上のコーヒー豆

 

「ブラック・アイボリー」という名のコーヒー豆があります。

「黒い象牙」という意味です。

 

おそらく象牙に匹敵するほど高価なコーヒー豆であるために

そう名づけられたと思われます。

 

タイ北部で生産されている希少なコーヒー豆ですが、

なぜ希少かというと、ゾウを使って作られるからです。

 

もっと正確に言うと、ゾウにコーヒーの実を食べさせて、

フンの中からコーヒー豆を取り出しています。

 

もちろんコーヒー豆は洗浄して乾燥させて焙煎しますので、

衛生上は問題がありません。

 

しかし、なぜわざわざゾウに食べさせるのでしょうか。

それはゾウの体に消化酵素と腸内細菌が存在するからです。

 

それらのはたらきによってコーヒー豆が適度に発酵され、

独特の香りと味わいが生み出されるのです。

 

チョコレートのような甘い香りがあり苦味が少ないのが

ブラック・アイボリーの特徴と言われています。

 

同じように、動物を使ったコーヒー豆は他にもあります。

インドネシアの「コピ・ルアク」がそうです。

 

「コピ」とはインドネシア語でコーヒーのことであり、

「ルアク」とはマレージャコウネコのことです。

 

マレージャコウネコにコーヒーの実を食べさせて、

フンの中からコーヒー豆を取り出しています。

 

チョコレートとバニラを合わせたような甘い香りと

穏やかな味わいがコピ・ルアクの特徴です。

 

ただし生産量が少なく、高額で取引されています。

それはブラック・アイボリーと同じです。

 

現在では、コピ・ルアクを安定的に生産するために、

多くのマレージャコウネコが飼育されています。

 

それが動物虐待に当たるのではないかという意見もあり、

乱獲につながるのではないかという意見もあります。

 

そこで、野生のマレージャコウネコを使ったコーヒー豆を

コピ・ルアクとは別のブランドにしています。

 

それが「ワイルド・ルアク」です。

コピ・ルアクよりもさらに高価です。

 

野生動物ですから、どこにフンがあるかわかりません。

コーヒー豆を回収するのに手間がかかります。

 

そのため天然物は価格が高騰してしまうのですが、

その分、味わいも格別だそうです。

 

ヘーゼルナッツのような甘い香りと柑橘系の爽やかな酸味と

チョコレートのような後味が特徴と言われています。

 

しかし、ワイルド・ルアクの入手はなかなか困難です。

コピ・ルアクでさえ難しいのですから。

 

それならうちのネコで試しに作ってみようと思う人も

もしかしたらいるかもしれません。