おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしいことばを探してみましょう。

コーヒー豆の価格が高騰している意外な理由

 

今年に入ってからコーヒー豆の価格が急騰しています。

コーヒーショップでも値上がりが相次いでいます。

 

物価高の昨今ですから、多少の値上がりは仕方ありませんが、

それにしても、上げ幅の大きさには驚きます。

 

価格高騰の理由はいくつか考えられますが、

近年の気候の変動は大きな原因です。

 

コーヒー豆以外の農作物についても言えることですが、

異常気象によって収穫量が不安定になっています。

 

干ばつや大洪水やエルニーニョ現象などの発生が、

珍しくなくなってきています。

 

今後も気候の変動は長期的に続くと予想され、

コーヒー豆の生産に悪影響を及ぼします。

 

また労働者の高齢化と慢性的な人手不足によって

人件費が増大しています。

 

さらに原油の高騰による製造費や輸送費も増大し、

流通も滞っています。

 

しかし、一番大きい理由は市場の動きです。

買い注文が殺到しているのです。

 

品不足になる前に在庫を確保しようとする動きが

結果的に市場価格を押し上げているのです。

 

中には、今後の値上がりを見込んで投機的に

買い占める業者もいるのかもしれません。

 

そのため価格がこれほど急激に上昇したと考えられます。

ちょうど昨年から続く「令和の米騒動」に似た状況です。

 

昨年の夏頃から米の値上がりが始まったときには、

秋に新米が出回ると価格は落ち着くと言われました。

 

しかし、価格が落ち着くどころか次第に高騰し続け、

とうとう銘柄米は昨年の二倍の値がつきました。

 

そう簡単に米の価格が下がらないのと同じように、

残念ながら、コーヒー豆の高値も長期化しそうです。

 

ところで、もう一つコーヒー豆の価格高騰の理由があります。

意外かもしれませんが、ベトナム産コーヒー豆の影響です。

 

あまり知られていませんが、ベトナムのコーヒー豆は、

生産量も輸出量もブラジルに次いで世界第二位です。

 

日本にも多くのベトナム産コーヒー豆が輸入され、

全輸入量の約3割がベトナム産です。

 

ベトナムで栽培されているコーヒー豆はアラビカ種ではなく、

主にロブスタ種(カネフォラ種)です。

 

アラビカ種に比べると苦味と深いコクがあるのが特徴です。

ストレートよりはブレンドコーヒーによく使われます。

 

イタリア発祥のエスプレッソコーヒーにもブレンドされ、

独特の苦みを生み出しています。

 

日本で人気に高いシアトル系のコーヒーショップは、

もともとイタリアのバールに倣って生まれました。

 

ですから、日本人の大好きなエスプレッソコーヒーには、

ロブスタ種の苦味が活かされています。

 

ところが、ベトナム産コーヒー豆の生産量が減少しています。

その理由は、中国でドリアンの大ブームが起きているからです。

 

中国向けにコーヒー豆を生産していたベトナムの農家は、

次々とドリアンの栽培に切り替えています。

 

そしてコーヒー豆の代わりにドリアンを中国に輸出しています。

その方がはるかに多くの現金収入を得られるからです。

 

そのためベトナム産コーヒー豆の全体の輸出量は減少し、

結果として日本にも以前ほど入ってこなくなりました。

 

コーヒー好きにとってたいへん悲しいことですが、

ベトナム産コーヒー豆は入手しにくくなっています。

 

主食の米と違って、コーヒーは嗜好品だから、

量を減らせばよいだろうという意見もあります。

 

しかし、コーヒーがなければ生きていけない人も多く、

コーヒーの価格高騰は深刻な問題です。

 

コーヒーの味が一層苦く感じられることでしょう。