おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

杏仁豆腐

杏仁豆腐は豆腐ではありません。

杏仁霜(きょうにんそう)から作られるデザートです。

 

アンズの種の中には仁(じん)を呼ばれる核があります。

梅干しの種の中の天神様や銀杏と同じものです。

 

これを粉にしたものが杏仁霜です。

古くから鎮咳の生薬として使われてきました。

 

しかし杏仁霜は苦味が強い薬です。

服用しやすく甘みをつけた薬膳が杏仁豆腐です。

 

現在では薬膳というより主にデザートして食べられています。

砂糖や牛乳と混ぜてゼラチンや寒天で固めて冷やします。

 

プリン風にするのであればゼラチンが向いています。

みつ豆風にするのであれば寒天が向いています。

 

カクテルフルーツを混ぜて作ると見映えがよいのですが、

フルーツに含まれる酵素がゼラチンを溶かしてしまいます。

 

そのため時間が経つと杏仁豆腐の形が崩れてシロップが濁ります。

みつ豆風にするときは寒天を使った方がきれいに仕上がります。

 

杏仁霜はじつは採れる量が希少な高級食材です。

そこでアーモンドパウダーを代用することがあります。

 

アーモンドはアンズと同じバラ科サクラ属の植物です。

食用にするのはやはり仁の部分です。

 

それを粉状にしたものがアーモンドパウダーです。

風味が杏仁霜にたいへんよく似ています。

 

アーモンドパウダーで作った杏仁豆腐も決して悪くありません。

杏仁霜に負けないおいしさです。

 

できれば「アーモン豆腐」と名づけたいほどです。