おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしいことばを探してみましょう。

昔のすいとんが美味しくなかった理由

 

毎年8月は、戦争の悲惨さを後世に伝えるために、

各地でさまざまなイベントが開かれます。

 

すいとんを食べるという企画もその一つです。

戦中戦後の食糧難の時代を体験できます。

 

太平洋戦争末期から終戦にかけて、日本国内では、

食料事情が極度に逼迫しました。

 

禁輸によって食料が輸入できなくなっただけでなく、

食料生産を担う若者が戦場に出征したからです。

 

米をはじめ、多くの食料品が配給制となりました。

そこで米飯の代用食となったのがすいとんです。

 

すいとんは水で練った小麦粉を団子に丸めて煮込んだ

料理ですが、肝心の小麦粉が不足していました。

 

そのためトウモロコシ粉や大豆粉を混ぜるばかりでなく、

糠(ぬか)や麩(ふすま)を混ぜることもありました。

 

糠とは精米するときに残る米の外皮の粉であり、

麸とは小麦を挽くときに残る外皮のクズです。

 

いずれも本来は食用には向いていません。

主に家畜の飼料に使われるものです。

 

また、昆布や鰹節や煮干しの入手も困難でしたから、

美味しい出汁を取ることもできません。

 

醤油や味噌も少なく、せいぜい塩で味つけする程度でした。

もちろん、すいとんと一緒に煮込む具材もありません。

 

野菜とも呼べないような野草を摘んできて入れたり、

サツマイモの葉や蔓まで捨てずに入れたりしました。

 

さらに燃料も不足していたので、十分な火力が得られず、

生煮えの状態で食べることも多かったそうです。

 

そのようなすいとんが美味しいはずはありません。

もう二度と食べたくないと思うのも当然です。

 

何とか飢えを凌いで食糧難を生き抜いた世代にとって、

すいとんは苦しかった時代を思い出させる料理なのです。

 

ただし、すいとんはかなり古くから食べられてきました。

すいとんの名誉のために擁護すると、素晴らしい料理です。

 

まともな食材と調味料を使えば、美味しく料理できます。

昔のすいとんが美味しくなかったのは戦争のせいなのです。