おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしいことばを探してみましょう。

新米ばかりが米ではないけれど

 

もうそんな季節なのかと驚かれるかもしれませんが、

早くも新米の季節がやってきました。

 

この時期に出荷される新米は「早場米」と呼ばれます。

通常の米よりも約1か月早く収穫される米です。

 

九州や四国などの台風の多い地域で栽培されています。

台風が来る前に稲刈りを終わらせるためです。

 

しかし稲刈りが早いということは、それだけ田植えも

早く行われるということです。

 

温暖な気候でなければ生産できないという理油もあって、

主に九州や四国などで栽培されてきました。

 

ところが、現在は千葉県産の早場米も流通しています。

ふさおとめ」や「ふさこがね」がそうです。

 

春先のまだ寒い時期に田植えをするために、寒さに強い

「ひとめぼれ」から改良された品種です。

 

米の品種の中でも「ひとめぼれ」の耐冷性は際立って高く、

その能力に一目惚れして採用したのでしょう。

 

ちなみに「ふさおとめ」「ふさこがね」の「ふさ」とは、

千葉県の房総半島の「房」のことです。

 

ところで、日本人は新米に対して信仰にも近いほどの

深い愛着を持っています。

 

ふっくらつやつやの新米のご飯は、日本人を魅了する

不思議な魔力を宿しているように感じられます。

 

令和7年産米が流通すると、令和6年産米は「古米」、

令和5年産米は「古々米」と呼ばれます。

 

古米や古々米は、新米に比べて品質が劣化しているため

美味しくないと従来は考えられてきました。

 

ところが、政府備蓄米が市場に放出されるようになると、

古米や古々米に対する評価が変わってきました。

 

「意外と美味しい」「全然悪くない」「十分食べられる」

そういった声が聞かれるようになりました。

 

じつは、昔の古米や古々米が美味しくなかった理由は、

貯蔵方法が悪かったからです。

 

低温でしっかり品質管理すれば、米の風味の劣化は、

ある程度抑えられることがわかってきました。

 

現代の日本の米の貯蔵庫は、ハイテクを駆使して、

温度と湿度を徹底管理しているそうです。

 

その技術は世界最高だと小泉農水相も語っています。

おかげで美味しい古米を食べることができます。

 

ところで、料理によっては新米よりも古米の方が

珍重されることがあります。

 

たとえば寿司がそうです。

酢飯には古米が使われます。

 

新米は古米より水分を多く含んでいるために、

寿司酢の浸透がよくないからです。

 

また、新米の華やかな香りはどうしても寿司ネタと

ぶつかってしまいます。

 

その点、古米の控えめな風味は、寿司ネタの個性を

十分に引き立ててくれます。

 

新米には新米のよさがあるように、古米には古米の

よさがあるのです。

 

面白いことに、近代以前は古米の方が新米よりも

価値が高かったそうです。

 

理由は、古米の方が膨張性に優れているので、

炊いたときに量が増えるからです。

 

昔の人は、美味しいかどうかより、お腹いっぱいに

なるかどうかを重視していたようです。

 

今は飽食の時代ですから、量より質が大切です。

新米ばかりが米ではないけれど、やはり格別です。

 

ふっくらつやつやの新米のご飯は、日本人を魅了する

不思議な魔力を宿しているように感じられます。