阿蘇を旅する二人の青年が温泉宿に泊まる話が出てきます。
温泉宿で半熟卵を注文するのですが、女中さんが半熟卵を知りません。
そこで青年は、卵を半分だけ茹でることだと説明します。
ところが女中さんが持ってきた4個の卵は半熟ではありません。
2個が生卵で2個が茹で卵でした。
青年が訳を聞くと女中さんはこう答えました。
「はい。半分だけ茹でました。」
これはなかなか面白い話だと思います。さすが夏目漱石です。
この小説は漱石が阿蘇を旅行したときの体験に基づいて執筆されました。
ですから実際にあった話かもしれません。
しかし温泉卵のことを半熟卵ともいいます。
温泉宿の女中さんが温泉卵を知らないはずはありません。
漱石の創作だったのかもしれません。
正確にいうと半熟卵と温泉卵は違うものです。
半熟卵は黄身が半熟の卵と白身が半熟の卵があります。
黄身が半熟の卵は茹でる時間を短くして作ります。
白身が固まる程度に火を通し、黄身まで火が通り過ぎないようにします。
すると黄身がとろとろの半熟卵ができます。
ラーメン屋さんのトッピングに使われるのはこの卵です。
白身が半熟の卵は温度差を利用して作ります。
黄身が固まるのは約70度です。白身が固まるのは約80度です。
70度よりも少し低い温度で20分から30分ほど茹でます。
黄身が固まり切らず白身がとろとろの半熟卵ができます。
温泉卵は後者の半熟卵です。温泉のお湯や蒸気を利用して作ります。
ただし温泉の効能があるかどうかはわかっていません。