おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

料理を伝えることの難しさ

料理を教えてほしいと人によく頼まれます。

 

しかし、自分で料理するのは好きなのですが、

人に料理を教えることがとても下手です。

 

それは、計量したことがないからです。

 

たとえば、調味料は小さじ何杯ですかと訊かれても

適量としか答えられません。

 

茹で時間を訊かれても、火が通るまでと答えるだけです。

 

茹で卵でさえ時間を計ったことがありません。

半熟も固茹でも、いつも勘に頼っています。

 

毎日作る味噌汁の味噌も量ったことがありません。

未だに何グラム使っているのか知りません。

 

ですから、正確に教えることができないのです。

 

また、料理の用語も伝わりにくいものです。

言葉だけでは説明し切れません。

 

笹がき、面取り、桂むき、イチョウ切りなどは、

目の前で実演しないとわかりません。

 

一口大に切ってと言ったら質問されたことがあります。

一口大とってどのくらいですかと。

 

だから一口大だって、では通じません。

食べやすい大きさと言わなければなりません。

 

一番訊かれて困るのは電子レンジの使い方です。

私自身が料理に使ったことがないからです。

 

何ワットで何秒と訊かれても困ります。

 

もちろん電子レンジを否定するつもりはありません。

ただ私が古風な人間なだけです。

 

たいていの和食の料理方法は、電子レンジの発明以前に

すでに確立しているというのが、私の考えです。

 

ですから電子レンジを使わずに作ることができます。

むしろ使わない作り方に私は慣れています。

 

電子レンジは短時間で簡単に料理できる魔法の箱ですが、

手間暇かけて料理するのも楽しいものです。