おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

米菓の「柿の種」はなぜ柿の種の形をしているのか

「柿の種」という名前の米菓があります。

国民的に愛されているお菓子です。

 

誕生したのは1923年(大正12年)のことです。

つまり今からちょうど100年前です。

 

柿の種は、最初から柿の種の形をしていたわけではありません。

柿の種の形になったのは、ある偶然がきっかけです。

 

柿の種が生まれたのは、新潟県にある米菓工場です。

生みの親は、今井與三郎さんと奥さんです。

 

当初は、うるち米を使って煎餅を焼いていましたが、

もち米を使って「あられ」を作ることにしました。

 

薄く延ばした餅を重ね、型抜きで小判型に成形します。

それを香ばしく焼いて醤油と唐辛子で色付けします。

 

ところが、奥さんがうっかり型抜きを踏んでしまいました。

型抜きは変形して三日月型になってしまいました。

 

與三郎さんが直そうとしますが、元の小判型に戻りません。

仕方なく、三日月型のあられを作ることになりました。

 

ところが珍しい形がかえって評判となります。

おかげで、あられの売り上げが伸びます。

 

柿の種に似ているとお客さんに言われたことをヒントにして、

あられを「柿の種」と命名することにしました。

 

こうして柿の種の形をした「柿の種」が誕生しました。

 

與三郎さんは柿の種を商標登録しませんでしたので、

今では多くの米菓メーカーが柿の種を発売しています。

 

昭和になると、柿の種にピーナッツを混ぜるようになりました。

いわゆる「柿ピー」です。

 

誰が最初に思いついたのか、正確にはわかっていませんが、

柿の種とピーナッツの相性の良さは抜群です。

 

かつて柿の種とピーナッツの比率は6:4だったそうです。

長年にわたって黄金の比率とされてきました。

 

しかし現在では7:3が主流となっているそうです。

消費者の嗜好が変わってきたのでしょうか。

 

もちろんピーナッツの入らない柿の種も根強い人気があります。

生粋の柿の種愛好者も少なくありません。