おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

スイートポテトは日本だけの洋菓子か

スイートポテトは日本発祥の洋菓子です。

海外ではほとんど知られていないそうです。

 

英語でスイートポテトというとサツマイモを指します。

洋菓子を意味することはありません。

 

ですからスイートポテトは日本語です。

 

洋風ではありますが、意外と古い歴史があります。

すでに明治二十年頃には出回っていたようです。

 

裏漉ししたサツマイモに砂糖と牛乳とバターを混ぜ、

楕円形に成形してサツマイモの皮に詰めます。

 

表面に卵黄を塗ってオーブンで焼き上げます。

香料にヴァニラやシナモンを使うこともあります。

 

サツマイモの黄色い身と表面の焼き色が美しい洋菓子です。

 

発祥の時期や場所については定かではありませんが、

明治時代の洋菓子職人が考案したと推察されます。

 

しかし、和菓子からヒントを得ているように感じられます。

それは「芋きんとん」の製法と似ているからです。

 

芋きんとんは、クチナシの実と一緒に茹でて黄金色をつけます。

裏漉しにかけて白砂糖を混ぜます。

 

それを布巾に包んで「茶巾絞り」にした和菓子です。

そのため、別名「茶巾芋」ともいいます。

 

色合いや見た目を重視する美感は和菓子の大きな特徴です。

スイートポテトにもそれが活かされていると思います。

 

また、サツマイモの皮を器にするのも和菓子の手法です。

 

和菓子でも「柚餅子(ゆべし)」や「柿羊羹」を作るときには、

柚子や柿自身を器とします。

 

柚子の実をくり抜いたものを「柚釜」といいます。

そこに味噌と砂糖と柚子の果汁を和えて詰めたものが柚餅子です。

 

また、懐石の和菓子である柿羊羹も柿の実をくり抜き、

寒天と砂糖で羊羹にした実を再び詰め直します。

 

おそらくスイートポテトもその製法に倣ったと思われます。

日本が誇る洋菓子といえます。