クロワッサンとはフランス語で三日月のことです。
当然クロワッサンは三日月形をしています。
ところが三日月形をしていないクロワッサンもあります。
角が真っ直ぐに伸びたクロワッサンです。
どうして形が違うのでしょうか。
クロワッサンには2種類の異なる油脂が使われています。
外見でそれがわかるように工夫されているそうです。
三日月形は、マーガリンを使用したクロワッサンです。
真っ直ぐな形は、バターを使用したクロワッサンです。
フランスでは伝統的にそう決まっているそうですが、
店や地域によって多少の違いがあるようです。
クロワッサンの種類によっても異なっています。
たとえばパン・オ・ショコラがそうです。
チョコレートを包み込んだクロワッサンですが、
三日月形ではなく筒状の四角形をしています。
また、切り込みを入れてサンドイッチを作りには、
真っ直ぐな形の方が便利です。
じつは、フランスでは三日月形よりも真っ直ぐな形が多いそうです。
マーガリンよりもバターの方が好まれているのかもしれません。
食材の歴史からいうと、バターの方がマーガリンよりも先輩です。
初期のクロワッサンには、バターが用いられていたはずです。
しかし、先に活躍していたバターが三日月形ならわかりますが、
なぜか後から登場したマーガリンが三日月形です。
それは一体なぜでしょうか。
マーガリンは、19世紀にフランスで誕生しました。
高価なバターの代用品として考案されました。
一説にはナポレオン3世が作らせたとも言われています。
当時は軍用食材の需要が高まっている時代でした。
マーガリンが商品化されて、急速に普及するようになると、
さまざまな調理の場面でバターと競うようになりました。
クロワッサンにもバターに代わって使われるようになります。
おかげでクロワッサンの低価格化に大きく寄与します。
大衆的に安定供給されるのは消費者としては喜ばしいことですが、
もともとクロワッサンは高級なパンです。
熟練したパン職人の高度な技能とバターの豊かな風味によって
サクサクしたクロワッサンが生み出されます。
やはりフランス人は、王道のクロワッサンを愛しています。
たとえ三日月形でなくとも、本物の味を求めています。
そのため、潔くマーガリンのクロワッサンに三日月形を譲り、
バターのクロワッサンは新しい形に生まれ変わりました。
それが真っ直ぐな形のクロワッサンです。
バターを使って焼き上げた真っ直ぐな形のクロワッサンには、
食に対するフランス人の真っ直ぐな心が感じられます。